【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、高値波乱の展開に移行
連載 2024-06-17
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は1キロ=360.90円まで値上がりして3月18日以来の高値を更新した後、340円台前半まで急反落する荒れた展開になった。原油相場が底固く推移し、為替が総じて円安・ドル高に振れたことはポジティブ。しかし、上海ゴム先物相場が高値波乱の展開になり、それと連動して極端に不安定な値動きを迫られた。
上海ゴム先物相場は6月11日に1トン=1万6,110元まで値上がりし、年初来高値を更新した。しかし、その直後に1万5,000元台前半まで急反落した後、1万5,000元台中盤まで切り返すなど、極端に不安定な値動きになっている。年初来高値更新で短期トレンドが上向きであることを確認した直後に、高値から1,000元幅の急反落となるなど、荒れた展開になっている。何ら新たな売買材料が見当たらない中で急伸と急落が繰り返されており、短期投機筋主導の展開になっていることがうかがえる。このまま天井形成に向かうのか、新たな上昇再開前の持高調整に留まるのかが注目されている。
タイ中央ゴム市場(ソンクラ)のRSS現物相場は、6月13日時点で前週比1.5%安の1キロ=84.15バーツとなっている。産地気象環境が改善の兆候を見せていることで、6月入りしてからは値下がり傾向が目立つ。ただし、依然として高値圏での取引が続いている。
日本の気象庁が発表した「エルニーニョ監視速報」では、「昨年春から続いていたエルニーニョ現象は収束したとみられる」と報告された。今季の東南アジアの熱波がエルニーニョ現象の影響が大きいとみられるため、そのエルニーニョ現象が収束したことは、気象環境の改善に寄与する見通し。
4~5月は東南アジア各地で40度を超える高温傾向が報告されていたが、6月は気温が高い地域でも30度台後半に留まっている。今後は夏に向かうために再び高温傾向が強まるリスクもあるが、足元では気象環境が安定化する兆候が見られることが産地相場を押し下げている。このため、消費地相場を押し上げても瞬間的に急反落するなど、一方的な上昇トレンドを形成するのが難しくなっている。
なお、気象庁は秋にかけてラニーニャ現象が発生する可能性が高いとも報告している。実際にラニーニャ現象が発生すると、年後半のゴム生産環境が再び不安定化するリスクに注意が求められる。
原油相場が改めて騰勢を強めていることはポジティブ。6月入りしてからは石油輸出国機構(OPEC)の減産縮小計画で一時急落していたが、夏季休暇シーズンの需給引き締まり観測が強くなっている。原油高環境もゴム相場の下値を支えた。
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