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連載コラム「白耳義通信」68

「二つのコンテスト」

連載 2022-05-23

 ようやくコロナ規制が緩和されはじめます。5月21日にブリュセルで行われた協調委員会に拠ると、ベルギーでは「5月23日より、病院、医務室(医師のいる場所)及び薬局を除き、あらゆる場所でマスク着用義務がなくなる。ただ、多く人が行き交う場所や老人ホームでは、マスクの着用を推奨。また、屋内での良好な換気も、引き続き強く推奨される。」とあります。日本でも先日、「屋外でのマスク着用は、必要はない。」と、政府が新型コロナ対策の新たな考え方を発表したばかりですが、あらゆる場所を認めたベルギーと日本で若干の差があるのは、マスク信仰の強さの違いでしょうか。

 また、日本からベルギーへの渡航も、「必要不可欠ではない渡航の禁止が解除」され、検査義務や渡航者位置特定フォーム、ワクチン接種証明の提出義務も無くなったので、ヨーロッパへの旅行を検討される方が、是非増えて欲しいところです。懸念される日本への帰国も6月より「青区分の国・地域からの帰国者・入国者については、ワクチン3回目接種の有無によらず、入国時検査を実施せず、入国後の自宅等待機を求めない。」とのことですから、ファストトラックを利用すれば、日本への入国も以前よりスムーズになりそうです。

 さて、5月といえば、ベルギーでは二つのコンテストの話題でニュースが賑わいます。一つは、先日14日、イタリア・トリノで開かれたユーロビジョン・ソング・コンテスト2022(Eurovision Song Contest 2022)です。優勝したのは、ウクライナのヒップホップグループ・カールシュ・オーケストラ(Kalush Orchestra)が歌う “Stefania”。審査員投票では4位(1位はイギリス)だったものの、視聴者投票で逆転。下馬評通りの結果となりました。因みにベルギーは最終的に25カ国中19位という結果に終わりました。

 今年は、ロシア、ベラルーシが不出場した他、過去に参加したことのある5カ国も出場を見送ったりと、ユーロビジョン・ソング・コンテストの存続も問われていますが、国によっては89%と高い視聴率を誇るコンテストをみすみす手放すとも思えません。翌年の開催は通常優勝した国で開かれるのですが、来年無事ウクライナで開かれるような状況であって欲しいものです。

 二つ目のコンテストは、エリザベート王妃国際音楽コンクール。今年は5月9日から6月4日まで、チェロ部門が行われます。5月21日に決勝進出者12名が発表されました。各国の内訳は、韓国4名。他は1名ずつで、中国、セルビア、ウクライナ、エストニア、オーストリア、カナダ、スイス。そしてベルギーとなっています。

 ベルギー以外の国から来ているコンクール出場者の多くは、決勝まで残れば約一ヶ月に渡ってベルギーへ滞在することになります。彼らのケアするのは、ホストファミリー。コンクールへ集中できるよう「すべての心配事を取り除く」為、ある時にはタクシー運転手になり、またある時は調理人になり、そして審査結果に一喜一憂したりと、コンクール期間中は気の休まる日は無いそうです。しかし、全ては「音楽への愛情のため、芸術家への敬意のため」と、何十年にも渡って若き演奏家をサポートする家族もいるそうです。世界三大音楽コンクールの一つ、エリザベート王妃国際音楽コンクールは、このような人のお陰で成り立っています。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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