連載コラム「白耳義通信」64
「ブリュッセルで一番美しい通りの名前は?」
連載 2022-01-26
鍵盤楽器奏者 末次 克史
年の変わり目は、街中で花火があがり、賑やかに新しい年を迎えるベルギーですが、2022年も昨年に続き、静かな幕開けとなりました。本年もよろしくお願い致します。
ここ一週間、新型コロナウィルス新規感染者数の平均40,000人を超えるベルギーですが、このコラムを書いている23日にも、首都ブリュッセルで70,000人の参加者が見込まれる「コロナ政策等に対する抗議デモ」が予定されています。マスクを着用していない人々が集まって、更に感染が拡大しないことを祈るばかりです。
先日ニュースを見ていたら、そのブリュッセルで「一番美しい通りの名前は何?」という記事が目に留まりました。ベルギーにしろ、他のヨーロッパ諸国にしろ、歴代の王様や首相の名前などが大通りにつけられていたり、著名人の名前がつけられた通りを良く目にします。
この記事で一番最初に取り上げられていた通りの名前は Noodlottige Rotsstraat / Rue de la Roche Fatale(ノートロッティギュ・ロッツストラート/リュウ・ドゥ・ラ・ロッシュ・ファタル)です。前にもお話したかも知れませんが、ブリュッセルの通りの名前はオランダ語、フランス語が併記されています。前者を直訳すると「不運な岩の通り」、後者は「致命的な岩の通り」になります。ベルギーの年配の方なら、この通りの名が何を指しているのか一目瞭然です。ベルギーで最も愛されたと言われるアルベール1世(Albert I)が、滑落事故死したこと受けてのことです。
その他印象に残った通りでは
Naam Jezusstraat / Rue du Nom de Jésus「イエスと言う名の通り」
Zeehondstraat / Rue du Chien Marin「アザラシ通り」(これは、オランダ語の「アザラシ」zeehond 海の犬をフランス語に直訳したものと思われる)
Minnebronstraat / Rue Fontaine d’Amour「愛の噴水」
などです。
わたしが一番好きな通りの名前は Beenhowersstraat / Rue des Bouchers「肉屋の通り」です。一番最初に覚えたオランダ語の曲が “Rue des Bouchers” で、ベルギーの歌手ヨハン・ヴルミヌン Johan Verminnen のアルバム “Hartklop” という、ブリュッセルを歌ったアルバムに収録されています。
この通りは、ブリュッセルの胃袋とも言われているイロ・サクレ地区のレストラン街にありますが、2016年のブリュッセル連続テロ事件の影響を受け閑散とし、ようやく明るい兆しが戻ってきたと思ったらコロナ禍で閑古鳥が鳴いている状況です。一日も早く、喧騒とした賑やかな街が戻ってくることを願って止みません。
【プロフィール】
末次 克史(すえつぐ かつふみ)
山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。
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