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連載コラム「白耳義通信」51

「バーチャルツアーの時代へ」

連載 2020-12-18

鍵盤楽器奏者 末次 克史

 今冬は、例年に比べて寒いのでしょうか? 日本の建築構造のせいか、レンガ造りが基本のベルギーに比べ、屋内が異常に寒く感じる今日この頃です。

 さて日本は、12月に入って新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数が増加傾向にありますが、一足先にピークを迎えたベルギーでは、減少傾向にあります。ただ一日当たりの新規感染者数が800人に達するのは、当初想定していたクリスマスではなく、年末になるだろうと、ベルギー公衆衛生省は予測しています。

 また、Covid-19ワクチン接種が3段階に分けて実施されることが発表されました。一足先にイギリスで始まっているワクチン接種ですが、実はベルギーの工場で作られたものです。製薬会社の本社がイギリスにあるので仕方無いと言えば仕方無いのですが、国民の中には不満を訴える人もいます。計画では、先ず医療従事者や介護職員等から始まり、次に65歳以上の高齢者、最後に成人と、段階を追って接種されるようですが、国民全体に行き渡るのは春から夏になりそうです。

 2020年は新型コロナウイルス感染症のニュース一色となった年でしたが、皆様にとられてどのような一年だったでしょうか。私はと言えば、2月に帰国して以来、未だに日本に滞在しております。その間、母が亡くなったり、今まで経験したことのない職業に就き、新しい発見をしたり、アップダウンの激しい年となりました。

 コロナ禍において、在宅勤務が実施されるところが多いようですが、私の仕事の一つである観光業も、新しい方向性を探っている最中です。つまり、海外に行きたくとも行けない状況に於いて「バーチャルツアー」で旅して貰おうという動きが世界各地で始まっています。クリスマスシーズンの今、フィンランドではオンラインでサンタクロースと対話したり、サンタクロースへ会いに行く模擬体験ができるツアーが人気のようです。

 チョコレート、ワッフル、ビール以外に、これと言った目玉の無いベルギーでは何ができるか、ガイドが一丸となって考えている最中です。先日、ベルギーの博物館で、これまで偽物と思われていた日本の浮世絵版画が本物であると判明したニュースが伝わってきました。葛飾北斎、歌川広重と共に、個人的に現在のアニメに多大な影響を与えたと思っている川瀬巴水の作品展が、月末二日間ブリュッセルで催されます。

 日本ではまだ余り知られていない美術館、博物館も、疑似体験が出来れば面白いのでは無いでしょうか。コロナの収束にはもう少し時間が掛かりそうな現在、官民一体となって世界へ発信していく時代になってきているのでしょう。

 今年も一年間、白耳義通信をお読み下さり有難うございました。2021年が皆様にとりましてより良い年になりますよう、心よりお祈り申し上げます。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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