連載コラム「白耳義通信」50
「聖ニコラ、テレビ初インタビュー!」
連載 2020-11-18
鍵盤楽器奏者 末次 克史
10月30日、ベルギー政府は11月2日から12月13日までロックダウン(都市封鎖)を導入すると発表しました。人口10万人あたりの新型コロナウイルス(COVID-19)感染者数が、欧州最悪の状況を踏まえてのことです。これにより、本来なら諸聖人の日(Allerheiligen / Toussaint)後から始まる一週間の秋休みが、二週間に引き伸ばされました。
現在は、ピーク時の感染者数(約24,000人)から20%まで減少。しかし死亡者数はピーク時から横ばい状態が続いています。日本とベルギーを結ぶ直行便は1月末までの運休が決定。但し、クリスマスと年末年始は臨時便が就航する予定です。イタリアやオランダでは増加傾向にあるようですので、ヨーロッパ全体をみると、まだまだ収束する気配がありません。
先日 EU(欧州連合)が、現在開発されている新型コロナウイルスのワクチンを3億回分購入することで合意したと発表。感染拡大の防止が期待されるところです。
と、アメリカ大統領選挙速報がトップニュースになったことはあっても、依然ニュースの大半はコロナ関連の話題で埋め尽くされているベルギーです。そんな中、ほのぼのとする映像が伝わってきました。なんと、公共放送である VRT が、聖ニコラの単独インタビューに成功したのです!
以前このコラムでも取り上げたことがありますが、12月6日は子供たちが楽しみにしている聖ニコラ(Sinterklaas)の日です。聖ニコラは毎年この時期、ヨーロッパで二番目に大きいアントワープ港へ、スペインから船でやって来て子供たちと触れ合うのですが、今年はコロナ禍の為中止。しかし、密かにベルギーへ入国していたようです。「今年はもう来ないんだろう…」と、残念に思っていた子供たちへ向けてメッセージをだしました。
「今年はいたずらをする子供はいない(いたずらをする子供にはプレゼントが無いのです)」「わたしは、ペスト(黒死病)もスペイン風邪も経験したけれど、ここにいる!」「本当ならマスクをしなければならないのだけれど、わたしの豊かな白い髭がウイルスを防いでくれる」等、大人が聞いてもクスッと笑ってしまうようなものです。
インタビューをされた場所が、例年クリスマスに国王が国民へ向けてメッセージをだす部屋の雰囲気と似ていたのも、人々がホッとする要因になったようです。このような時だからこそ、困っている人を助けたり、無実の人を救ったり、亡くなった子供を蘇らせたと言われる、愛に溢れた聖ニコラの存在が、ポッと心に明かりを灯してくれるのでしょう。
【プロフィール】
末次 克史(すえつぐ かつふみ)
山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。
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