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連載コラム「白耳義通信」36

「ベルギーの鉄道事情」

連載 2019-09-12

 天気予報ではインディアンサマー(小春日和)という言葉が聞かれるようになり、日中は暖かいものの朝晩冷え込んできているベルギーです。

 さて、今月はベルギーの鉄道事情についてお話します。日本の鉄道の運行状況は世界でもその正確さが知られているところです。数分の遅れで謝罪のアナウンスが流れ、大幅に遅れた場合は直ぐニュースになるなど、安心して乗っていられるというのが大方の意見でしょう。

 イタリアやフランスは電車が時間通りに来ないとよく言われていますが、ここベルギーも負けてはいません。時刻表通りに来るのは全体の60%とも言われています。これは5分以内の遅れはカウントされておらず、1, 2 分の遅れなど当たり前というのも日本から見たら考えられないことでしょう。

 これには大きな要因が二つあると考えられていて、一つはベルギーの鉄道は国鉄(NMBS/SBCB)であるものの、メンテナンス等はインフラベル(Infrael)という会社に任せている為、両者の連携が上手く取られていないことが挙げられます。自由化し経営体制は改善したものの、利用客にとってはそれが故に不便を強いられています。

 もう一つは首都ブリュッセルの中央駅の存在です。20世紀半ばまではブリュッセルには北駅(ベルギーの北東部、ドイツ、オランダ方面行き)と南駅(ベルギーの南西部、フランス方面行き)しか大きな駅はありませんでした。北駅はホームが12番線あり南駅は22番線あります。本来はここが始発・終点で折り返し運転をしていたのですが、ブリュッセル中心部(グランプラス)近くに駅を作り北と南を繋げたのが混乱の始まりとなったのです。つまり中央駅には6番線までしかなく、1本でも電車が遅れると中央駅で渋滞が発生し電車が立ち往生してしまう為です。

 このような状況ですから、市民は電車が遅れるものと諦めているような節があります。数分遅れたところでお詫びのアナウンスが流れる訳でも、説明がある訳でもなく、日常風景の一コマとして時間だけが流れていきます。時々、車掌に「ベルギーの鉄道は本当に酷いね…」と言っている人を見かけますが、車掌も慣れたもので「自分のせいではありません。自分は何も出来ません。ホームページで連絡先を調べて、そこからご意見をお願いします」と言うのみ。

 そんなベルギー国鉄ですが、この秋北駅と南駅の間を近代化工事することになりました。この工事期間中は更にダイヤが乱れると踏んでいますが、これで電車が時間通りに来てくれるのであれば良しとしましょう。個人的には以前のように北駅と南駅で折り返し運転をし、北駅と南駅の間のみ運行する電車を5分毎に運行させれば、今のシステムでも十分改善できると思うのですが…。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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