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連載コラム「白耳義通信」27

「ベルギーのコーヒー」

連載 2018-12-14

鍵盤楽器奏者 末次 克史

筆者が日頃愛飲しているコーヒー
「黒猫」


 ブリュッセル首都圏地域を囲む大環状線からアントワープへ向かうA12号線付近を車で通っているとコーヒーのいい香りがしてくる。ベルギーで販売されている殆どのコーヒーを焙煎・加工している工場があるためである。

 ヨーローッパの国々を旅しているとコーヒーが美味しい国、紅茶が美味しい国に分かれるけれど、これは過去に支配していた地域と大きく関係していると思っていたら実はそう単純な話でもないらしい(詳しくは旦部幸博著「珈琲の世界史」講談社現代新書を参照されたし)。例えば英国は現在紅茶の国として有名だが、当初はコーヒーが飲まれていたようだ。

 ベルギーはどちらかというとコーヒーの国であり(これはベルギーが現在のフランス、スペイン、フランスなどに支配されていたことと関係があると思っている)、カフェに行っても美味しい紅茶はなかなか飲むことができない。というのは、殆どのカフェではティーカップにお湯が注がれ、ティーパックが添えられてくるからだ。洒落た店では自分でティーパックを選べるところもある程度である。

 対してベルギーで「コーヒーを一杯」と注文すると(1.50 〜 3.00€) 、イタリア、フランスなどでよく飲まれるようなエスプレッソカップに入れられた濃いエスプレッソではなく、同じようにエスプレッソマシンを使うけれど、エスプレッソでもなくアメリカンでもなく程よい濃さでコクがあり、苦味があり、甘みと酸味のバランスがとれているコーヒーを飲むことができる。

 そしてカフェのコーヒー(紅茶も)に欠かせないのが、付け合せででてくるチョコレートやスペキュロース(ベルギーのクッキー)であり、日本や他のヨーロッパの国々に行った時、コーヒーを注文しても寂しい気持ちになることこの上ない。

 という訳で、街のいたる所に美味しいコーヒーを飲むことができるカフェがあるので、日本でお馴染みのコーヒーチェーン店の出番がなかなか無いのがベルギーである(空港、大きな駅を除く)。

 因みに個人的な体験で言うと、ヨーロッパの他の国へ旅行に行って毎食後エスプレッソを飲んでいると、大食いしても胃もたれをしない。エスプレッソはドリップコーヒーよりカフェインが少ないというし、胃薬の代わりになるのではと勝手に思っている。ベルギーに来られた際は紅茶よりコーヒーを。そして旅行に出掛けた時はエスプレッソをオススメしたい。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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