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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、米中首脳会談の結果次第か

連載 2018-12-03


マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努

 TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=150円台後半、TSRが140円台中盤まで小幅切り返す展開になった。需給の緩みに対する警戒感を背景に年初来安値更新が繰り返されていたが、RSSは11月21日の151.00円で下げ一服となり、自立反発局面を迎えている。

 上海ゴム先物相場は、1トン=1万元台中盤から後半で下げ一服となっている。11月20日の1万1,000元割れからコアレンジを切り下げていたが、足元では下げ一服となっている。

 天然ゴム需給には、特に目立ったポジティブ材料は見当たらない。良好な生産環境の一方で需要の先行き不透明感は強く、需給緩和状態に対する警戒感は強い。ただ、20カ国・地域(G20)首脳会合で米中首脳会談が設定される中、今後の通商環境には不透明感が強く、短期筋のショートカバー(買い戻し)に下値を支えられている。

 ゴムに限らずマーケットの関心は、12月1日に予定されている米中首脳会談に集中している。トランプ米大統領は、中国との会談が不調に終わった際には、中国の全製品に対して課税を行う方針を示している。ただ、米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長は、通商問題解決に向けた機会になるとの認識を示しており、ここでの協議がどのような結果・内容になるのかで、12月のゴム相場見通しは大きく変わることになる。

 中国経済に対する減速圧力そのものを否定することは難しいが、米中貿易戦争は世界経済における最大のリスク要因と評価されているだけに、ここで通商問題が解消に向かうと、年末に向けてゴム相場の下げは一服する可能性もある。

 一方、タイ中央ゴム市場の現物相場は、11月29日時点でUSSが前週比0.3%安の1キロ=37.67バーツ、RSSが同0.4%安の39.91バーツとなっている。特に大きな値崩れを起こしている訳ではないが、産地集荷量に目立った変化はない一方、政府による市況介入もみられず、上値の重い展開が維持されている。

 タイ政府は、ゴム相場の低迷を受けてゴム農家に向けに総額180億バーツ(約619億円)の補助金交付を決定している。ただ、この種の政策支援はゴム生産の採算コスト切り下げを促すことで、市況対策としての効果は認められない。タイ当局は、ゴム農地を30%削減する必要性を訴えているが、特に具体的な施策は打ち出されていない。

 産地気象環境にも特に目立った問題は報告されておらず、集荷量は安定している。

 米中首脳会談がゴム相場のダウントレンドに修正を迫るか否かが焦点になる。

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