「SPring-8」や「J-PARC」、「京」など活用しタイヤ性能を飛躍的に向上
住友ゴム工業、先端研究施設用いた材料研究
会員限定 ラバーインダストリー 2022-04-12
大型放射光施設「SPring-8」や大強度陽子加速器施設「J-PARC」、スーパーコンピュータ「京」といった先端研究施設を用いた材料研究によって、住友ゴム工業のタイヤ性能は近年、飛躍的な向上を遂げている。先端研究施設をタイヤ開発に取り入れた先駆者である同社は、2001年からSPring-8の活用を開始。その後は、例えばシリカやカーボンブラック、硫黄架橋剤などを観察する際はX線の施設、紐状のポリマーや結合剤を観察する際は中性子の施設、解析はスーパーコンピュータの施設といった具合に、それぞれの先端研究施設が持つ特徴に合わせ、それらを併用することで、2012年発売の「エナセーブPREMIUM」、2016年発売の「エナセーブNEXTⅡ」、2019年発売の「エナセーブNEXTⅢ」など、画期的な性能向上を果たしたタイヤの開発に繋げている。同社は、先端研究施設をどのようにタイヤ開発に結びつけてきたのか、そして、その先に何を見据えるのか。
1990年から2000年頃にかけて、タイヤは構造設計によって性能を大幅に向上させることが可能だった。同社でもコンピュータシミュレーションを活用した「Digital Rolling Simulation」を用いることで、構造設計によるタイヤ開発を進めていた。
一方、タイヤに使用するゴム材料によって性能を向上させることは、限界と考えられていた。ラボの分析装置の限界によってゴムの内部構造がよく分からなかったこと、学問として複雑すぎることが、その要因だ。SPring-8をタイヤ開発にいち早く取り入れた、住友ゴム工業の岸本浩通研究開発本部分析センター長は当時を振り返り、「タイヤ用ゴム材料は、グリップなど様々な性能の向上を図るため、10数種類以上の材料が混ざった非常に複雑なものとなっており、ラボにある様々な分析装置では内部構造を詳細に解析することができなかった」と話す。
岸本氏が住友ゴム工業に入社した1998年は、SPring-8が稼働を開始した翌年。「ゴム材料の中身はなぜ分からないのだろうかという疑問と同時に、SPring-8を用いればその構造が分かるのではないかと考え、SPring-8の活用に取り組み始めた」(岸本氏)という。
当時、X線は、ある単位で規則正しく構造が並んでいる結晶を調べることには適しているが、
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