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【特集】メディカルとエラストマー

住友ゴム工業、医療用精密ゴム部品事業の拡大進む

ラバーインダストリー 2021-06-04

バイアル用ゴム栓,プレフィルドシリンジガスケットなど医療用ゴム製品


 住友ゴム工業の医療用精密ゴム部品事業が順調に拡大している。同事業の売上高は,2015年にスイスのロンストロフ社を買収したこともあり,新型コロナウイルスが世界経済に影響を及ぼした2020年も事業は堅調に推移した。同社は2020年に発表した新中期計画で,バリュードライバーの1つとして「高機能商品の開発・増販」を掲げているが,医療用精密ゴム部品事業はその高機能商品の一翼を担っている。

 住友ゴム工業の医療用精密ゴム部品事業は,2003年に合併したオーツタイヤが1997年にタイヤ以外の部門の多角化,事業規模拡大を目指し立ち上げた新規事業に始まる。オーツタイヤは,注射剤を入れるための容器であるバイアルのゴム栓を開発し,2000年に泉大津工場(大阪府泉大津市)内に工場を建設。その後,住友ゴム工業がオーツタイヤと合併し事業を継承した。2010年には加古川工場(兵庫県加古川市)でも医療用精密ゴム部品の生産を開始し,2015年1月には医療用ゴム製品を製造販売するスイスのロンストロフ社を買収した。2020年からは新設したスロベニア工場でも医療用ゴム製品の量産を行
っている。

 国内工場と海外工場で生産する製品は異なる。国内では,泉大津工場でバイアル用ゴム栓を,加古川工場では薬剤があらかじめ充填された注射器であるプレフィルドシリンジ中で薬液を押し出すプランジャー先端のガスケットやキャップを主に生産。一方,ロンストロフ社のスイス工場およびスロベニア工場では輸液バッグに用いられるゴム栓に加え,採血に使われる真空採血管のキャップを主に生産している。ロンストロフ社の買収は「新しい製品や販路を得ることに繋がった」(政岡憲ハイブリッド事業本部メディカルラバービジネスチームリーダー)という。工場は住友ゴム工業独自のワンウェイ生産工程を採用しており,作業室を工程ごとに区切ることで交差汚染を防止している。

政岡憲ハイブリッド事業本部メディカルラバービジネスチームリーダー

タイヤ開発で培った技術の応用が強み

 住友ゴム工業特有の強みは,タイヤ開発で培った技術の応用にある。ゴムの配合だけでなく,デジタルシミュレーションを活用することで,高品質な製品を開発している。注射器内で薬液を押し出すプレフィルドシリンジガスケットを例に挙げると,注射器内から薬液が漏れることは避けなければならないが,一方で滑らかに滑らなければ薬液を押し出すことができない。「滑りがスムーズかつ薬液が漏れないというのは背反性能であり,両立しにくい。こうした部分に,タイヤで培った技術を有する当社の強みがある。そうした技術は,容器や製薬メーカーに期待される部分でもある」(同)。

 目下,事業は順調に推移している。需要は先進国を中心に伸長しており,今後についても「まだまだ伸びていくとみている。欧州,アジア,米国いずれの市場も拡大していく」(同)という。中でも国内工場で生産されるバイアル用ゴム栓やプレフィルドシリンジガスケット,キャップは需要が旺盛なことに加えて,新型コロナのワクチン用としての需要も高まっている。一方,欧州市場の期待も大きい。「2021年も国内・海外ともに堅調な販売を見込んでいる」(同)。

 医療に用いられるため,求められるのは品質と信頼性だ。そのため価格競争には陥りにくく,参入障壁が高い。

顧客との関係性や新製品開発が成長のカギ

 今後のさらなる事業拡大でカギを握るのが,顧客との関係性だ。「消費財と異なり,CMを活用し商品を訴求していくことで売り上げ向上に繋がる性質のものではない。顧客といかに密に接し,いかに要求に合致させるかが重要になる」(同)と話す。

 新製品の開発も成長に欠かせない。欧州市場では製品展開の拡大も視野に入れている。医療に使用される製品はリニューアルが少なく,一度顧客に採用されると長期間使用されるという息の長さがある一方,「顧客が新製品を投入していく中で,常に要求にミートした製品を出し続けなければならない。そこは永遠の課題とも言える」(同)という。顧客から得た信頼性を活かし,密接な関係を構築することで,さらなる事業拡大を目指す。

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