震災から10年―ゴム・樹脂業界から見た防災、復興、被災地支援
十川ゴム、地震関連対策品の開発進める
ラバーインダストリー 2021-04-23
放射線遮蔽ゴムシートを開発・量産化
地震に関連した防災で言えば、放射能から周囲の環境を安全に保つための「放射線遮蔽ゴムシート」の開発と量産化にも、十川ゴムは成功している。
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、津波により福島第一原子力発電所で炉心溶融などの放射性物質の放出を伴った原子力事故が発生した。十川ゴムは従来から放射線を遮蔽する配合を持ち合わせていたが、原発における防災用途として、より遮蔽効果が高く、量産製品として安価な配合での提供を考え、鉛などの環境阻害品やタングステン、セリウムなどの高価な配合材を使用することなく十分な遮蔽効果がある製品の開発と量産化に成功した。
同製品に配合材として選んだのが、胃腸の検診でも使用される安価で安全性の高い硫酸バリウム。これをゴムシートに70%以上(重量換算)添加しながらも、十分なゴム弾性と耐久性を有するというのが製品開発のポイントだった。
ゴム弾性や歪み、耐候性なども十分な性能を有しているため、放射線遮蔽ゴムシートとしての遮蔽性能はもちろんのこと、パッキン材としての用途にも十分使用できる。金属と違い、カッターナイフなどで簡単にカットできるという加工上のメリットも大きい。
遮蔽効果については、地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターによる実測データはもちろんのこと、2014年8月17日には福島県南相馬市小高区金谷付近(福島原発から約15キロの地区)で実証試験も実施。実際の住居に対する遮蔽効果を推定するため、測定小屋に放射線遮蔽ゴムシートを貼り付け、小屋内の放射線量を測定した。また、土壌からの被曝を観測するために汚染土壌に放射線遮蔽ゴムシートを敷設し、ゴムシートのある場合とない場合の放射線量の差異測定も実施。これら実証試験においても、実験室レベル同等の非常に高い遮蔽効果を得ることができた。
同ゴムシートは、原子力事故当時の放射線を含んだ瓦礫搬送トラックの荷台と運転席の遮蔽や、原子力発電所から近い地域の作業場の床に敷くなど、対策に追われる作業者の安全に貢献した。
十川ゴムでは放射線遮蔽ゴムシートで得た知見を活かし、鉛に代わるX線遮蔽材として原子力関連設備、被災地や復興作業現場の放射線遮蔽材、放射線廃棄物や除染処理関連などの震災対応に加え、放射線医療関連機器や食品の検査機器など、幅広い分野での展開を進めている。
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