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震災から10年―ゴム・樹脂業界から見た防災、復興、被災地支援

十川ゴム、地震関連対策品の開発進める

ラバーインダストリー 2021-04-23

浮屋根式タンクのスロッシング現象を抑制する高減衰バッファー材

 十川ゴムは日本の地震発生確率が高いことに対応するため、地震関連対策品の開発に努めてきた。

 そのうちの1つが、浮屋根式タンクのスロッシング(容器内の液体が外部からの比較的長周期な振動によって揺動すること)現象を抑制する高減衰のバッファー材(緩衝材)だ。

 開発のきっかけは、2003年9月に発生した北海道十勝沖地震。同地震では、苫小牧市に立地する製油所内で石油貯蔵タンクの浮屋根が沈没し、石油貯蔵タンクの全面火災にまで拡がった。3~15秒のやや長周期の地震動によって、石油タンク内にスロッシングが生じたためと考えられている。そこで十川ゴムでは、スロッシングを抑制することで、火災等の災害発生を防ぐための研究を中央大学などと産学共同で行った。

10分の1スケールモデルで実験


 研究ではまず第一段階として、100分の1スケールモデルでの浮屋根沈没対策に関する検証実験をスタートした。検証の結果、浮屋根の地震対策として従来から施工されているバッファー材の合成ゴムの材料特性や形状といった設計条件を改良することにより、大きな減衰力が得られ、石油貯蔵タンクで発生するスロッシング現象を抑制することが可能であると判明した。

 そこで第二段階として、地震発生翌年の2004年9月9日に、愛知工業大学耐震実験センターの協力を得て、10分の1スケールモデルでのタンク内貯蔵液のスロッシング挙動およびバッファー材の減衰効果の確認を公開実験で実施した。

 実験の起振条件は、周波数スペクトル補正を行った北海道十勝沖地震の苫小牧加速度レベルの地震波、正弦波0.46Hz(変位±5ミリ)で、実験パターンは自由水面、浮屋根モデル①(ワイパーシールのみ)、浮屋根モデル②(ワイパーシール、バッファー材)の3パターン。10分の1スケールモデルの基部にアクチュエーターでスロッシング現象が発生する振動を与え、スロッシングの増幅およびバッファー材の効果を確認した。

 実験の結果、高減衰バッファー材モデルを取り付けると地震波を素早く減衰するため、浮屋根を地震波による破損から守り、火災等の発生を防ぐことが確認できた。バッファー材があることで、振動時の衝突エネルギーを吸収し衝突による浮屋根の破壊を防ぐとともに、液面の揺動を増幅させず減衰することで、液面揺動による浮屋根の沈没も防止する。

 十川ゴムではスロッシング現象を抑制する高減衰のバッファー材のほか、地震時の橋桁落下を防止する落橋防止ゴムやライフラインの管路を守る可とう継手など地震発生時の災害防止対策製品に加え、地震発生後の緊急対策製品としてLPGガスをエネルギーとする小型発電機に使用するガスホース、災害用移動炊飯器用ガスホースなど、復旧に向けた製品の開発にも取り組み製品化している。

(次ページ 放射線遮蔽ゴムシートを開発・量産化)

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