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震災から10年―ゴム・樹脂業界から見た防災、復興、被災地支援

藤倉コンポジット、東日本大震災で被災した実体験活かす

ラバーインダストリー 2021-04-22

非常用モバイル充電器「AQUA Charge」

 藤倉コンポジットが製品化した「AQUA Charge(アクアチャージ)」は、コップ一杯の水でスマートフォン2台をフル充電できる非常用モバイル充電器。その開発には、東日本大震災で被災した実体験が活かされている。

「AQUA Charge」


 開発のきっかけとなったのが、2011年3月11日に発生した東日本大震災。震災により、同社の原町工場(福島県南相馬市)、小高工場(福島県南相馬市)が被災するとともに、同工場に勤務する従業員の中には、家族とともに避難生活を余儀なくされた人もいた。

 震災に直面したことで、「災害に対応できる製品を開発したい」(藤倉コンポジット)との思いが強まった。そこで、災害時に人々が何に困っているかを探索し、目を付けたのがスマートフォンの充電だった。

AQUA Chargeはコップ一杯の水でスマホ2台をフル充電できる


 災害時、被災地では水や食料とともに、家族との連絡や情報収集に使用するスマートフォンが重要な役割を果たしている。しかし、災害により停電が発生すると、スマートフォンを自宅で充電することはできず、また避難所で提供されるスマートフォンの充電サービスでは、2~3時間列に並んで15分ほどしか充電できない。その短い充電時間では、電池がすぐにきれてしまい、翌日に再び2~3時間並ばなければならなくなる。

非常用マグネシウム空気電池「WattSatt」

 そうした課題の解決を目指し、2013年から研究開発に着手し、2016年に法人、官公庁向けとして完成したのが、マグネシウムを電極に使用し、電解液となる塩水を投入することで発電する非常用マグネシウム空気電池「WattSatt(ワットサット)」だ。付属の発電用塩と水(2リットル)を混ぜて塩水を作った後、その塩水を電池に入れることで発電する。使用する水は通常の飲料水の他、雨水や海水でも良く、USBポートは5個あるため、スマートフォンを充電しながら、各種USB機器の接続が可能だ。

「WattSatt」


 ワットサットは法人や官公庁に好評を得たが、避難所やオフィスでの使用を想定しているため、1台でスマートフォン15~30台がフル充電できるほど大容量。出品した展示会でも好評を得たが、「展示会に来場した人から家庭用として使うにはサイズ(幅212ミリ×奥行147ミリ×高さ213ミリ)が大きいので、各家庭で使える個人用のサイズが欲しいとの要望を多く貰った。そうした声を受け、ワットサットを家庭向けに小型化した、アクアチャージの開発に繋がった」(同)という。

WattSattはUSBポートも5個ある(イメージ)


 アクアチャージを使用するまでの過程は、基本的にワットサットと同じ。ケースに付属の発電用塩を入れ、水(コップ一杯)を注いだ後、そのケースに電池本体を沈めることで発電する。発電までに要する時間は10秒程度。電池本体のUSBユニットにスマートフォンを接続することで、充電が可能だ。サイズは幅105ミリ×奥行き95ミリ×高さ104ミリとコンパクトながら、電池容量は11,000mAhの大容量で、電池残量が0%のスマートフォン2台をフル充電することができる。「災害時の停電は長くても1週間程度で解消されることが多く、家族で2台のスマートフォンがフル充電できれば、停電の期間は乗り切れるというコンセプトで開発した」(同)。非常用マグネシウム空気電池を生産するメーカーは数社あるが、これほどコンパクトなものは藤倉コンポジットでしか生産していない。

 フル充電までに要する時間は、一般家庭のコンセントで充電した場合と同程度で、この早さもアクアチャージの特徴の一つ。災害用として従来備蓄されている乾電池やモバイルバッテリーと異なり、水を入れなければ発電しないため、乾電池やモバイルバッテリーのような保存中の放電による性能劣化の心配がない。5年間の長期保管が可能で、その間に性能劣化することはない。

(次ページ ゴムのノウハウが活かされ高性能に)

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