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北海道ニッタの森に自生するカエデやモミジから樹液を採取

ニッタ、国内初となるメープルシロップ製造工場を開設

その他 2025-03-03

 ニッタは2月19日、国内初となる「メープルシロップ製造工場」(北海道中川郡池田町)の開所式を行った。

カナダから輸入した濃縮機


 新設の工場は、木造平屋建てで建築面積338平方メートルというコンパクトな造りながら、最先端のカナダ製メープルシロップ製造設備を完備している。

 エバポレーター(濃縮機)や逆浸透膜(R/O)濃縮機といった高度な設備に加え、樹液回収用のチューブラインを整備。チューブには勾配があり、自重で樹液が工場に送られる仕組みだ。「濃縮機の燃料には間伐材を利用し、環境にも配慮している」(松田茂樹コーポレートセンター経営戦略室部長兼MSプロジェクトリーダー)。

 工場は2~3月の約4週間稼働。製造能力は1万リットル以上で、安定した高品質製品の生産体制を確立した。

メープルシロップ製造工場外観


親ラインと子ラインの合流地点


樹木と工場をつなぐチューブライン


 メープルシロップの製造は、厳しい寒さが続く2~3月にかけて行われる。夜間と日中の寒暖差によって、メープル樹木が大地からミネラル豊富な水分を吸収し、わずかに糖分を含む樹液を放出する自然現象に基づいている。この樹液を濃縮機により約60分の1まで煮詰めると、100%天然のメープルシロップができあがる。

樹木一本一本にチューブを刺し、樹液を採取する


 ニッタは、十勝地方に約6,700ヘクタールの広大な森林を保有。毎年伐採と植林を繰り返してきた。しかし、これまでの森林関連事業は原木販売や造林用苗木生産が中心で、森林の豊かな自然資源を十分に活用しきれていなかった。こうした中、社員が自然資源の新たな活用方法としてメープルシロップの製造・販売を提案した。

 メープル樹液は、北海道ニッタの森に自生するイタヤカエデとヤマモミジ約2,000本から採取する。2種をブレンドすることで、イタヤカエデのさっぱりとした味わいとヤマモミジのコク深い風味を融合させたシロップとなる。

 なお樹液の採取量は樹木全体の約5%に留めるため、「樹木の成長に悪影響を及ぼすことはない」(同)とし、持続可能な森林保全を可能としている。

 開所式には、石切山靖順社長をはじめとする同社役員ほか、メープルシロップの製造担当の北海道ニッタ(勝山安久社長)と、販売担当のわくっとニッタ(山口聡士社長)の社員、また安井美裕池田町長、飯田晴義幕別町長、設計・施工関係者を含む計33人が出席。式は神事に則り厳粛に進行し、神酒の代わりにメープルシロップで乾杯した。

石切山社長らによるテープカットの様子


 式では石切山社長が、「メープルシロップの事業は、2022年に社内公募で集まった「新事業探索チーム」の若手社員が、SDGsの観点から企画提案したものだ。当社は、今後さらなる森林資源を活用した様々な企画・提案・運営を期待し、1月に当社初の社内ベンチャー「わくっとニッタ」を幕別町内に設立した。やさしく温かくご支援いただけたら」とあいさつした。

あいさつする石切山社長


 新工場で製造される国産メープルシロップは、4月から販売開始が予定されており、十勝管内の道の駅や北海道内の土産物店などで展開される。また、池田町及び幕別町の「ふるさと納税の返礼品」としての採用も決定しており、地域ブランドの向上と産業振興に寄与することが期待される。

 石切山社長は、「この事業の成功をもちろん望んでいるが、ニッタには新しいことに意欲的に取り組み、チャレンジできる風土があることも広く知ってもらう機会としたい」と語った。

 また山口わくっとニッタ社長も「元々新しい事業を作りたいという想いで入社した。まずはこのように形になってうれしく思う。現在、メープルシロップ事業以外にも同時並行で他のプロジェクトを進めている」と、国産メープルシロップ販売を皮切りに、同社新規事業への意欲を示した。

山口氏(左から4番目)と松田氏(右から3番目)、北海道ニッタ社員らによるプロジェクトチーム

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