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テラヘルツ光で非破壊検査

慶應義塾大学理工学部、黒色ゴム内部の歪みを測定

その他 2017-12-27

コンパクト化した検査装置


 慶應義塾大学理工学部の渡邉紳一准教授らの研究グループは、可視光や近・中赤外線を透過しないカーボンブラックが配合された黒色ゴム材料内部にテラヘルツ光を照射し、その透過光から得た偏光計測結果を力学的なひずみ情報に変換するアルゴリズムの開発に成功した。

 黒色ゴムはタイヤや防振ゴムなどに幅広く利用されているが、光は透過しないため、その内部ひずみの検査が困難となっていた。今回、黒色ゴムを透過するテラヘルツ光を用いることで、ひずみ量を表すひずみテンソル各成分の定量的なイメージング計測を実現。この成果により、これまでは見えなかった黒色ゴム内部の非破壊検査が期待できる。

 ■テラヘルツ光
 テラヘルツ光とは、周波数1012ヘルツを中心とした、電波と光波の境界に位置する電磁波の一種。物質によって可視域の光とは異なる透過特性を示すため、新しい非破壊・非接触検査光源として期待されている。このテラヘルツ光を偏光計測と組み合わせることで、物質の屈折率固有軸の向きや複屈折の大きさを調べることができる。

 ■カーボンブラックがカギに
 通常、ゴム材料には耐久性を増すために、カーボンブラックが配合されているが、このカーボンブラックの配合によって作られた黒色ゴムは、可視光だけでなく近・中赤外線も透過しないため、光計測による非破壊検査の障害となっていた。だが、今回の研究ではこのカーボンブラックがひずみ測定のカギとなった。

 今回の研究では、テラヘルツ光だけが黒色ゴム材料に対して透過性を持つことに着目。テラヘルツ光に対する黒色ゴム材料の屈折率は、黒色の起源であるカーボンブラックの並び方によって決定され、偏光測定によってある方向への屈折率が大きいこと(異方性)が分かれば、その並び方を推測できることを実証した。

 ゴムは外から力が加わると、異方性を持ったカーボンブラック凝集体の並び方が変化し、引っ張った方向に沿って整列するようになる。今回の研究では、引っ張ったゴム材料について、①「どの方向」に屈折率が大きいか(屈折率主軸角度)を決定②屈折率主軸方向の屈折率と垂直方向の屈折率を比較することで「どの程度」の屈折率差(複屈折)があるかを決定し、カーボンブラック凝集体の整列の仕方に関連していることを見出した。

 以上の結果から、テラヘルツ偏光計測により、カーボンブラック凝集体が「どちらの方向に」、「どの程度」整列しているかを知ることができる。そして、カーボンブラック凝集体の整列の様子から、材料が「どちらの方向に」「どの程度」ひずんでいるかを推測することができる。

渡邉紳一准教授


 ■今後の展開
 同研究の成果は、17年12月15日に東京・国際フォーラムで開催された「第18回慶應科学技術展(KEIO TECHNO-MALL)2017」でも紹介された。渡邉准教授によるプレゼンテーションも行われ、渡邉准教授は、「テラヘルツ光の市場規模は年率40.4%という驚異的な速度で拡大している。今回の研究成果により、新しいユーザーニーズを取り込みたい」と語り、来場者の関心を集めた。

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