日本免震構造協会(古橋剛会長=日本大学元教授)の技術委員会・災害時調査部会(永野正行委員長=東京理科大学教授)は9月30日、令和8年熊本地震における免震建物調査報告会をリモートで開催した。

 同地震は7月28日16時27分に発生。震源は熊本県熊本地方の深さ約15kmで、マグニチュード7.1、熊本県宇城市および氷川町で最大震度7を観測した。日奈久断層帯で発生した右ずれ・正断層による直下型地震で、震央に近い地域では一部で長周期パルス(活断層近くで観測される周期数秒の非常に強い揺れ)を観測。建築物や土木構造物、ライフライン施設に甚大な被害を与えた。

 同協会の技術委員会・災害調査部会では、地震発生直後から熊本県内の免震建物に関する情報収集を開始するとともに、国土交通省、国土技術政策研究所と連携し、現地調査を実施した。

 調査は7月31日から8月21日の期間に4回にわたり行った。調査地域は八代市、宇土市、益城町、大津町、熊本市、阿蘇市、水俣市、人吉市、山鹿市、天草市の広範囲を対象とし、免震建物の揺れの様相を大局的に捉えることに努めた。

 主な調査は、積層ゴム支承など免震部材が配置されている免震層が、地震時に水平方向にどれくらい動いた(効果を発揮した)かの軌跡を金属・樹脂板などに針で傷をつけて記録する「けがき計」の観測のほか、建物外観や(免震建物周辺の隙間を塞ぐ)エキスパンションジョイントの破損状態の確認、住人の聞き取り調査などで行われた。その結果、同協会が把握する熊本県内51棟のうち、市庁舎や病院、共同住宅を含む24棟を調査し、所有者・管理者から了解を得た21棟について報告した。

 それによると、震度5弱~6弱だった県北部の最大応答変位(元の位置から最も変形・移動した距離)は3.2㎝~8.2㎝。県南部では震度5弱~5強の地域は1.0㎝~3.8㎝に留まったが、震央に近い震度6強の熊本市、宇土市、益城町では9.3㎝~26.0㎝を観測。免震部材では鋼材ダンパーの塗装剥離が確認されたほか、エキスパンションジョイントのズレや外溝側のひび割れなどの損傷が報告された。

 また、震度6強かつ長周期パルスが確認された八代市の免震建築物では、けがき板を超える応答変位が生じ、免震建物の周囲に設けられた擁壁への衝突の痕跡が確認されたほか、「世界でも初めて」(日本免震構造協会)とされる積層ゴム支承の破断が確認された。

 一方で、長周期パルスによる損傷が確認されたものの、調査を行った24棟については、いずれの建築物も地震後に継続的に使用できていることから、建物の倒壊を防ぐだけでなく、内部空間の安全と機能を守るという免震構造の効果は「十分に発揮できた」(同)との認識を示した。

 なお、こうした被害を受けて、同協会では新たに「熊本地震復旧委員会」「熊本地震分析委員会」を立ち上げ、復旧、現象の分析に取り組んでいる。