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事業統合でS-SBRの生産能力世界3位に

【インタビュー】ZSエラストマー社長伊藤敬氏、いままでのお客様は大切にしつつさらに販路を広げていきたい

原材料 2017-04-10

 
 日本ゼオンと住友化学のS-SBR(溶液重合スチレンブタジエンゴム)事業統合会社「ZSエラストマー」が4月3日から営業を開始した。統合によるシナジーでZSエラストマーは何を目指すのか。同社の伊藤敬社長(日本ゼオンから出向)に話を聞いた。

 ■開発について
 もともと省燃費タイヤ用の合成ゴムは、1980年代に日本ゼオンが世界で初めて開発・上市したもので、パイオニアだと自負している。一方の住友化学は総合化学メーカーとして変性技術や触媒技術、有機合成、老化防止剤など、圧倒的な力を持っている。
 技術的なシナジーについては、昨秋に合弁の趣意書を交わした後、両社の基本技術をディスクローズし合った。いまは具体的な方向性や今後のテーマなどの本格的な詰めを行っている。過去からの特許や知的財産権が両社の間でクリアになるので、このメリットが大きい。いままではそれぞれが有する特許などが障害となりできなかったことができるようになる。

 ■生産拠点の統合について
 統合は2ステップでやっていこうと思っている。最初のステップは販売と開発の統合。その後に2-3年というイメージで生産を含めた全体的な統合を進めていこうと思っている。この2‐3年はどのようなことができるか検討する期間だと思っている。
 現状、明確に生産をどうするのかという絵ができているわけではなく、知らなければならないことがたくさんある。例えば、日本ゼオンの場合、S-SBRの国内拠点として徳山工場があるが、徳山工場ではS-SBRはゴムやラテックスなどの製品の中のごく一部で、簡単にS-SBRだけを抜き出して考えることができない。それは住友化学も同じで、さまざまな制約がある。唯一構造として単純なのは日本ゼオンのシンガポールプラントで、ここはS-SBR単独工場のため、臨機応変に対応することができる。2-3年をかけて、複雑な生産拠点の構造をクリアにしていきたい。

 ■販売先について
 ZSエラストマーのモットーは、「お客様の要望に応えること」だ。要望というのは供給能力であったり、最高の品質のものを届けることができる技術力であったり、販売を含めた総合力などを意味している。
 世界をみると、タイヤビッグ3(ブリヂストン、ミシュラン、グッドイヤー)は自前でゴムを持っているが、それ以外のタイヤメーカーは垂直のものは持っていない。この「それ以外のタイヤメーカー」の要望に応えていくことがZSエラストマーのミッションではないかと思う。ある特定のお客様だけではなく他のお客様にも供給できる、そういうポジションの会社を目指したい。いままでのお客様は大切にしつつ、販路を広げていきたい。

 ■ハイエンドとボリュームゾーン
 我々が取り組んでいるS-SBRは、ハイエンドであって、ボリュームゾーンではないが、これが5-10年するといまのハイエンドが一段階下がってボリュームゾーンになり、販売の裾野が広がっていく。ボリュームゾーンを狙うというのは一つの手ではあると思うが、ここは韓国や台湾の合成ゴムメーカーが入ってくるゾーンでもある。そうなると、昔の汎用ゴムのように価格競争になってしまう。ボリュームゾーンで戦うよりは一歩先を行って、ハイエンドを開拓し、それを知的財産権で守りながら、差別化していきたいと思っている。

 ■新社長としての抱負は
 人の融合、一体感、一致団結を図り、同じ山の頂を目指せるようにしたい。S-SBRの生産能力は、住友化学単独だと4万8,000トン、日本ゼオン単独だと12万5,000トンだ。一方、旭化成は増設後推定27万トン、JSRは増設後推定22万トンにもなる。これだと単独では一生かかっても追いつけない。しかし、事業統合することによって生産能力は17万3,000トンになり、世界3位の生産能力を有することになる。こうなると山の頂が見えるところまでくる。従業員のモチベーションも上がっている。
 販売、研究、技術、生産などの融合や、スケールメリットを出すためにコストをどれだけ下げたらいいのかなど、取り組まなければいけない方策はいろいろあるが、2-3年をかけて全てをクリアにしていきたい。

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