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2024年問題はトラック運送業者にとっても意識を変えるきっかけに

【運送事業者に聞く『物流の2024年問題』】カワキタエクスプレス社長川北辰実氏

インタビュー 2024-01-30

 働き方改革関連法の適用などに伴い、2024年4月からトラックドライバーにも時間外労働時間の上限規制等が適用される。いわゆる「物流の2024年問題」だ。トラック輸送能力の不足が指摘されるが、一方でカワキタエクスプレス(三重県亀山市)の川北辰実社長は「いずれにしても、現状のままでは長い目で見ると物が運べなくなる。2024年問題をきっかけに、トラック運送業界がこれからを担う若者にとって、魅力ある業界に変わらなければならない」と話す。トラック運送業者から見た2024年問題と人材不足の中でも人が集まる同社の仕組み等について、川北社長に聞いた。

 ■物流の2024年問題の影響とは
 荷主や消費者目線で言うと、これまで時間指定できていたり、翌日当たり前のように着いていた荷物が着かなくなる、時間指定できたとしてもその分運賃が上がるということになる。これまでの運賃で、これまでと同様の要求をすることには無理が出てくるだろう。場合によっては、今取引しているトラック運送業者では運んでもらえなくなるという事態も出てくるかもしれない。なかでも最も問題となるのが長距離輸送だ。規制によって、無理をした運行はできなくなる。

 トラックによる長距離輸送が難しくなると、例えば製造業において部品が届かない、完成品が輸送できないといったことや消費者では東京や大阪といった都市圏において、地方で作られた新鮮なものが食べられなくなるということが起こるかもしれない。

 送料が無料と考えている消費者は結構いるが、そもそもそれは間違いだ。トラック輸送には当然コストがかかるし、2024年はその輸送コストが確実に上がる。

 ただ、規制が始まる2024年4月にいきなり物が運べなくなるかと言えば、そんなことはないだろう。これまでも守らなければならない規制が多く実施されたが、トラック運送業者の経営者の中には意識が追いついていない人もいて、残念ながら規制を無視してきた会社もある。自分の代まで続ければ良い、処罰を受けたら会社をたためば良いという経営者もいて、トラック運送業者全体に規制が浸透するには、しばらく時間が掛かるだろう。その間は、本来運べないはずの荷物が運べるということが起こるかもしれない。しかし、それも長い期間の話ではなく、大きな方向性は間違いなく規制が示す方に向かう。

 今回の規制には、トラック運送業に若者を呼び込むという目的がある。規制に対応できないと人材が集まらなくなり、そうした会社は自然と淘汰される。トラック運送業界全体が若者シフトに業界を変えていかなければ、担い手がいなくなり必然的に物は運べなくなる。ドライバーとして働く人を増やすには、労働時間も休みも一般企業並みにする必要がある。それを守ることのできない企業は、トラック運送業者であれ荷主であれ淘汰されると考えている。

質の高い仕事目指し、労働時間、休日、給与を体系化、やりがいも備わる

 ■カワキタエクスプレスの取り組み
 車両台数が25台、従業員数は32人。トラック運送業者としては平均的な規模で、従業員の平均年齢は29歳台だ。

 会社としては、従業員が安心して働きやすく、働きがいのある環境を整えている。例えば労働時間や給与面では、一般企業並みの体系としている。労働時間や休日がきちんと決まっており、月給制で賞与もある。

 トラック運送業者では、走った分だけという歩合制の給与体系を導入している会社も少なくなく、当社も以前はそうだった。しかし、新卒者だけでなく、違う業界からトラック運送業者に中途入社する未経験者にとっては、労働時間、休日、給与が体系として決まっていることが会社だと思っている。

 稼ぎたい人だけが集まるのでは、決して質の高い仕事に繋がらない。当社が目指すのは質の高い仕事で、そのためには人材が重要となる。採用等を考慮し、14年前に今の体系を整えた。体系を整えたことで、それに見合った人材が入社するようになった。教育制度も整備しており、未経験者にとってもやりがいのある会社になってきていると思う。

 ■2024年問題をきっかけに業界が変わる
 今の若者は、ガツガツ稼ぐということにあまり魅力を感じていないように映る。それよりも、社会貢献や仕事のやりがい、自分の時間を大切にするといったことを重視していると思う。

 トラック運送業界は、走ったら走った分だけ稼げることを売りにしがちだが、そうではなく、会社としての仕組みや体系を整え働きやすさを高めたうえで、物流が社会にとってなくてはならない仕事で、なくなれば社会が止まるということをアピールする必要がある。2024年問題によって稼げなくなり、魅力がないという視点ではダメだ。

 トラックに乗りたい若者は一定数いる。憧れのある若者にそうした思いをあきらめなくても良いようにする。魅力を感じて入りたいが、調べるとブラックというのではダメで、働きたいと思わせる、魅力ある会社づくりを業界全体で進めていく必要がある。業界は会社の集合体だ。そのため、トラック運送業者各社が意識を変えなければ、業界は変わらない。

 2024年問題をきっかけに、それに適応できない会社が淘汰されることで、業界は変わっていくと考えている。そうすれば運賃も自然と上がり、給料も上がり、待遇も一般企業並みに近づいていく。

 現状のままでは、長い目でみると物が運べなくなる。自動運転もまだこれからの技術で、鉄道へのモーダルシフトにしてもそこに線路があり、走れるダイヤがあってこそであり、災害や事故に弱いという点がある。もちろん、線路以外はトラックが運ばないといけない。2024年問題をきっかけに、トラック運送業界が変わってほしい。悲観的な話ではなく、より良くなるための問題提起として、みんなが捉える。変化に対応していかなければならない。

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