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付加価値活かせる用途主体に伸ばす

【新社長インタビュー】クラレプラスチックス社長中島多加志氏、攻めと守りのバランス取る

工業用品 2017-06-13

 
 3月16日にクラレプラスチックスの社長に就任した中島多加志氏。「攻めと守りのバランスを取ることが私の役目」と語る。既存製品の用途・内容を変えるとともに、コンパウンド事業を拡大していく考えだ。

 ■社長就任の抱負
 クラレプラスチックスは1905年の創業以来、今年で112年が経過する。歴史のある会社で、全国には連綿と受け継がれている良いユーザーを抱えている。まずは、この部分を大事に伸ばしていきたい。

 当社の事業内容は、昔と随分変わっている。ゴムホースからスタートし、複合ホース、シート材のほか、今ではコンパウンド材料も有している。歴代の経営陣は、時代とともに事業を変革・拡大してきているので、これをもう一歩進めたい。

 私はクラレで繊維事業に長く携わったが、そこで事業が変わっていくスピードの速さを味わった。事業を伸ばす、攻めて実績を上げるには時間が必要だが、落ちていくスピードは予想以上に速い。それは何も繊維に限った話ではなく、クラレプラスチックスにとっても同じだ。新しい製品が伸びていく一方で、既存の製品の中には落ちていくものがある。

 私の役目は、攻めと守りのバランスを取ることだと考えている。落ちるスピードが速いものをいかに守るか、時間がかかる攻めのスピードをいかに上げていくかだ。

 ■当面の方針
 当面は国内市場に注力する。今後、国内がどれだけ伸びるかと言えば、それは中々難しい。ただ、ターゲットとなる市場はまだ増えると考えている。例えばスマートハウスやスマートタウンなどがそうだ。全体のボリュームは増えないが、省エネや高機能性など伸張する新規ニーズに応える付加価値製品を供給できるか。これは自動車や家電にしてもそうだ。ベースとなる考え方にマッチした製品を供給できれば、規模は大きくなくても、ターゲット市場、製品はまだ増えるだろう。

 幸いなことに、クラレプラスチックスはほとんどの用途、市場、特にインフラ関連の製品を数多く持っている。付加価値を活かせる用途を主体に、当面は伸ばしていく考えだ。

 ■コンパウンド事業
 コンパウンド事業は、当社の中でもまだまだ伸びていく。これまで種まきしていたものが、昨年から実績として増えてきた。たくさんの芽が出てきたので、これをいかに育て、摘んでいくか、ここはスピード勝負になるだろう。

 コンパウンド材料は、商材として最も重要になるだろう。コンパウンド販売は用途が広い。今はコンパウンド材料そのものの販売がメインだが、末端の情報を増やす意味でも、半製品、中間部材を持つ必要があると思っている。

 社内でいくら「良い物ができました」と言っても、それは誰にとって良い物なのか。最終的には消費者にとって良い物でなければならないが、当社が用途別に消費者の情報を得ることは難しい。そのため、エンドユーザーが何をどう考えているかの情報を得ることが重要だ。ハウジングや自動車、家電といったエンドユーザーの情報を入手できるようにするには、コンパウンド材料単品で販売しているだけではダメだ。半製品、中間部材を持つことで、より末端情報に近付く必要がある。

 ■クラレプラスチックスの印象
 売上高が80億円ほどで、利益も伸びていると聞いていた。伝統的な製品もあるので、「ホンマかいな」と思っていたが、クラレプラスチックスに来てその理由が分かった。

 その一つが、ありとあらゆる分野、しかもインフラ分野に入っているということ。用途が圧倒的に広く、選択肢が多い。そのため、競合メーカーが多くとも、自分が勝負できる土俵を選べる。不毛な消耗戦には巻き込まれない。

 もう一つが、繊維などと違って外圧が少ないこと。ホースは中が空洞のため、ホースそのものが輸送に適しておらず、海外から競合品が中々入って来ない。またほとんどがイージーオーダーのため、汎用品が少ない。やり方によっては、まだまだ伸ばせる製品があると思う。

 ■17年度業績計画
 16年度は、コンパウンド事業が伸び、計画をクリアした。17年度は中計の最終年度だが、16年度の伸びが高かったので、ほぼ横ばいを計画している。コンパウンド事業は、18-19年度は増える見通しで、それは次期の中計に織り込んでいく。
 新中計は増収増益を見込むが、増収増益自体が目的ではなく、稼げる分野をいかにスピードを上げて取っていくのかが目的になる。当社は、ゴム・化成品、フィルム・ラミネート、コンパウンドの分野があるが、そのうちゴム・化成品、フィルム・ラミネートについては中身が変わってきており、用途・内容を変えることで、利益を上げていきたい。コンパウンドについては、今後も伸びる芽が多いだろう。

 利益の上がるもの優先で伸ばしていくが、一方で工場については稼働率を上げる努力をする。利益の上がるものばかりを作り稼働率が落ちれば、当然の結果として利益を落とす要因になる。生産事業である限り、工場の稼働率は利益に直結する。作りにくい差別化製品だけでなく、売りやすい製品も作っていくことで、稼働率を高めていきたい。顧客サービスという観点からも重要で、差別化製品と売りやすい製品の両立は事業拡大のために不可欠だ。

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