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「ダンベル試験片」をカスタマイズ

ニッピ機械、柔らかいゴム素材をミクロン単位で薄肉化

工業用品 2022-07-07

 経験値や実力値といった100年以上の歴史が積み上げてきた知見がゴム工業の礎となっているといっても過言ではない。また近年は、電子顕微鏡をはじめ計測機器の高精度化、そしてスパーコンピューターの活用から、科学的見地からその知見が裏付けされる時代となってきた。「良いゴム」の実証から、さらに「もう一段高性能化を目指すことのできる素材」へ進化する可能性を秘めている。

 ニッピ機械(本社・兵庫県加西市、青田崇社長)では、ゴム製品の基礎的な性能を見極めるダンベル試験片を提供している。「標準的なサイズはもちろん、特に近年は半導体関連や粘性が高く柔らかいゴム素材をミクロン単位で薄肉化するなど、特殊用途のカスタマイズ化に向けての対応が求められて来ている」(青田社長)。

 同社は、創業1947年より長年靴、カバン製造用工程で使用される皮革加工用設備を製造。同社が取り扱ってきた天然皮革は、不均一で非常に柔らかい素材だ。革の状態、革の部位、革の種類、加工条件によって、硬度、密度、繊維の向きなど、不均一な皮革を、均一な厚みに加工する技術と設備を開発、そのノウハウも構築してきている。

 設備としてはゴム硬度で10~90度まで対応し、スライス最高有効幅は450㎜まで可能な「軟質素材用スライサー」をゴムや発泡体スポンジなど軟素材向けに販売し高い実績と信頼を誇ってきた。

 これらの製造装置の積極的な開発と、活用の技術力が認められ近年はダンベル試験片製造の依頼が急増してきた。「かつてはタイヤをはじめ自動車用ゴム部品、工業用ゴム製品、発泡ゴム製品の開発、基礎データー用のダンベル試験片、表層試験片のニーズが高かったが、このところ半導体デバイスの高密度実装技術が高度化して来てより小型化、コンパクト化が必要なことから、ミクロン単位での薄肉化への加工は要求され、当社の強みは化学的な手法で薄肉化するのではなく、素材の硬度や粘性を選ばず物理的に精密な薄肉化が可能なところにニーズが高まっている」(同)と話す。

 これまで「成型後、さらに精密な厚み精度での薄肉化が可能なのをはじめフィラーの配向に対し任意方向の加工。また狙った材料層(不要な面)だけ取り出せるなどの加工技術で、多様な課題可決をこなしてきた。またコストダウン(1枚の材料から複数枚にスライス加工)も可能だ」(同)。

 原材料の高騰動向を受けて、ゴム素材においても代替需要が活発だ。ゴム素材は重要な機能部品に使用されることが多く、その基礎データーの取得と検証は製品の可能性を大きく左右する。ゴム製品の高機能化、多様化、新規分野へ進出を支える試験片にも高度な課題が求められているが、ニッピ機械では「基本的な標準タイプのラインナップをもとにニーズに合わせたカスタマイズ化にも積極的に対応し、ダンベル試験片、表層試験片の最適化を供給したい」(同)と、これまでのノウハウの広い展開とニーズに対応した供給体制を整え、拡販につなげて行きたい方針だ。

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