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AI、ディープラーニング、DXを聞く

【インタビュー】日本ディープラーニング協会理事・事務局長 岡田隆太朗氏

工業用品 2022-01-12


 各企業が「AI(=人工知能)の導入」、「DX(=デジタルトランスフォーメーション)」に取り組んでいる。特にこの数年は、コロナをきっかけに業務内容を見直し、紙ベースだった業務を電子化したり、クラウドサービスで共有したりと、デジタルの力で効率アップをはかった企業も多い。国内では2021年9月にデジタル庁が設置されるなど、この流れが止まることはなさそうだ。画像処理や音声認識、データ分析など、多くのAI導入に貢献しているのが、AIの技術方法のひとつ「ディープラーニング」。このディープラーニングを日本の産業発展に繋げていくため設立されたのが、日本ディープラーニング協会(=JDLA)だ。今回、JDLAの理事・事務局長を務める岡田隆太朗氏に、ディープラーニングの発展の経緯から導入にあたって企業が注意すべき点などを聞いた。

AI、ディープラーニング、DXとは

 まずAIとディープラーニングについて簡単に説明すると、一番広い範囲を指すのがAIという概念だ。AIは、機械に人間が行うような思考や判断をさせることを目指したものだが、これに欠かせないのが機械学習であり、ディープラーニングは数ある機械学習方法の中のひとつだ。

 ディープラーニングは、技術の進歩により2012年あたりから従来より格段に高い精度を生み出すことが出来るようになり、特に音声や言語、画像認識の分野を中心に実用化が進んでいる。その精度は人間が実行するよりも高い精度を実現できるようになっている。

 DXは、デジタルを活用したビジネスの構造変革のことだが、このDXの中でも「データ活用」という観点で、ディープラーニングはその中核技術になっている。画像認識や音声認識等を通じた様々な状況のデータ化や、またそのデータの分析や活用、最適化において、ビジネス上のあらゆる場面で導入検討が進んでいる。メールやWebを利用するだけではDXとは言えず、従来の言葉で言えば「IT化」にあたる。DXの目的は、IT化したうえで、集めたデータを分析して傾向を探ったり、AIに学習させて検査の精度を上げたりと、蓄積した情報にさらなる付加価値を持たせていくことだ。

AI導入の際、考慮すべきこと

 AIは何でもできると思われがちだが、そうではない。重要なのはAIで何ができるかを知った上で、注意すべき点なども踏まえながら使いこなしていくことだ。

 例えば、Amazonでは人事採用にAIを導入していたが、選別に残った人たちを見ると女性がほとんどいなかったという。これはAIのバイアスによるものだが、結果、Amazonは人事採用AIの運用を取りやめている。

 AIをビジネスに利用する際には、AI導入によって何を実現したいのか、またAIが正しく動いているかどうかを常に見ていく必要がある。

JDLAが行っていること

 JDLAでは、AIを活用する上で必要な知識を養う講座をいくつか用意している。ビジネスマンに向けた「G(ジェネラリスト)検定」では、AI活用に関連する法律や倫理観、産業活用事例などAIの活用に関する基礎知識を扱っている。2017年から実施し、検定所有者は現在約5万人にのぼる。

 また、開発に携わるエンジニアに向けた「E(エンジニア)資格」もある。この資格は約100時間の認定プログラムを修了した後に受けることができる。2018年に開始し、合格者は現在約4,000人となっている。

 AI入門編、または全社的に行う講座として「AI For Everyone」というエントリー講座も設けている。講座は「AIの基礎」「AIプロジェクトの推進」「AIの社内導入と産業活用」など全5回に分けたビデオ形式で、無料で聴講できる。

JDLAが目指すもの

 国内企業のAI導入率はまだまだ低く、2021年3月に経済産業省が発表した資料によると、中小企業におけるAI導入率は3%未満という。これを増やしていくことがJDLAのミッションだ。

 AIについて知ってもらうために、企業向けはもちろん、学校や地方自治体でも講演を行っている。受講した子どもたちが成長したとき、働くなかで「この作業はAIに任せられるかも」と思えるようになってほしい。地方自治体についても、現在12団体がJDLAに加入している。

 JDLAが目指すのは、あらゆる企業や団体にとってAIの活用や運用がごく普通の選択肢となることだ。国内でAI導入が遅れている原因は、「難しそう」「都会のものだから、うちには関係ない」「機械屋の領域だから、うちの業種には関係ない」といった思い込みにあると思う。

 まずは、どんな事例があるのかを知ってもらい、他人事でなく“自分事”として考えてほしい。知ればきっと「これはあの作業にも応用できる」と思えることがあるはずだ。

 ■日本ディープラーニング協会(JDLA)ホームページ:https://www.jdla.org/

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