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当時の靴の提供者に感謝状贈る

アサヒシューズ、55年振りに聖火ランナーシューズを復刻

工業用品 2019-09-25

 アサヒシューズは先頃開催した「2020年春夏商品展示会」に、1964(昭和39)年に行われた東京オリンピックの聖火ランナーに提供したシューズを復刻した「アサヒランナーシューズ」を出品した。

復刻された「アサヒランナーシューズ」


 64年の新聞報道によると、日本ゴム(現アサヒシューズ)は、日本国内はもちろん、海外12カ国806人を含む約5,000人のオリンピック聖火ランナー(正走者)にシューズを提供したとある。ただし当時のことを知る人はすでに社内になく、新聞記事や雑誌に掲載された同社の広告等で情報がもたらされていた程度だった。

 ところが2020年の東京オリンピック開催が決まると、前回開催を振り返るニュースが増え、聖火ランナーにも焦点が当たるようになった。聖火ランナーにシューズを製造・提供したアサヒシューズも取材対象となり、これを契機に社内で復刻プロジェクトの機運が高まった。

 プロジェクトは困難を極めた。当時のシューズが手元になかったため、今春から福岡市内の高校に寄贈されていたシューズを借りては返すことを繰り返しながら調査を始めたが、復刻へのスピードが上がらなかった。

 そうしたなか、知人を介して情報を集めていた同社商品企画部長補佐の古賀稔健さんのもとに、山形県米沢市在住の田口重之さん(73)が寄贈を申し出てくれた、というニュースが届く。ここから復刻作業のスピードが上がり、展示会での披露にこぎつけた。

感謝状贈呈後、握手する田口重之さん(左)と佐藤栄一郎アサヒシューズ社長


 同社では9月18日、田口さんを東京開催の展示会に招待し感謝状を贈呈。10月に完成する復刻シューズを贈ることも決めている。アサヒランナーシューズは、受注生産して来年4月から発売される予定。価格は8,000円でサイズは23-28センチメートル(1センチメートル刻み)。

 当時高校3年生で、やり投げの選手だった田口さんは「55年間、押し入れに入れたままだったシューズに日の目が当たることは喜ばしいことだと考え、快くご提供しますと返事をした。当時の履き心地は覚えていないが、記憶にないということは足に馴染んでしっかり走れた証だと思う」と語った。

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