日本市場で本格的に事業展開はかる

 韓国・釜山市に本社を置く和承グループ(玄承勳〈Hyun Seunghoon〉会長)は、韓国国内をはじめ、海外各国でグローバルに事業展開する総合ゴム企業グループだ。同グループの中核企業である和承コーポレーションが、日本市場で本格的に事業展開することになった。先ごろ来日した同社のホ・ソンニョン(Sungryong Heo)CEOに、同社の事業概要や日本市場でのマーケット戦略についてインタビューした。日本では特にCMB(ゴムコンパウンド)、TPV(樹脂コンパウンド)、産業資材などを中心に市場開拓を進めていく方針だ。

CMB・TPVコンパウンドと産業資材で新規需要開拓進める

和承コーポレーション


 ■和承グループ&和承コーポレーションの概要
 和承グループは1953年に釜山市で設立され、ゴム靴事業からスタートし、現在では、自動車部品、コンパウンド、産業資材、総合貿易まで事業展開をはかり、年商は3.6兆ウォン(国際会計基準・連結)規模まで拡大している。

 和承グループの主要系列企業が和承コーポレーションと和承インダストリーで、和承コーポレーションが自動車部品、コンパウンド、産業資材、総合貿易事業を、和承インダストリーがシューズ、化学産業製品事業を担っている。

 和承コーポレーションの2025年度売上高は1兆6,398億ウォン、2026年度は1兆6,428億ウォンを計画している。グローバル関税障壁や為替不安などの影響によりやや保守的な見通しにしているが、持続的な成長を目指している。

 当社はタイヤメーカーを除く、ゴム・樹脂関連製品企業では圧倒的な№1企業で、マーケットシェアは50%以上だ。自動車部品のウェザーストリップやホース類、コンパウンドなどの素材関連は60%以上のシェアを持っている。


 ■自動車部品事業
 自動車部品事業は、当社売上高の57%を占める主力事業で、シーリング部品であるウェザーストリップをメインに、ブレーキホース、ラジエーターホース、冷却系熱可塑性樹脂ホース、3Dブローホースなど、自動車に使用されるほとんどのシーリング製品・ホース製品を製造・販売している。現代自動車向けが65%を占め、そのほか、ステランティス、VW、GM、BMWなど海外自動車メーカーにも供給している。

 日本の自動車部品メーカーとの取引もあり、自動車部品や原材料を供給している。日本メーカーの海外拠点にも当社の海外拠点から製品供給しており、2025年実績で、日本メーカーとの取引額は500億ウォンに達している。

 ニチリンさんとは、製品供給という面だけではなく、1988年にホース類の技術援助契約を結び技術交流もしており、40年以上の取引関係がある。私は1988年に技術交流の第1期生としてニチリンで学んだ。以来、私は多くの日本企業や日本の人たちと交流し、日本との関係が非常に深い。日本の企業とビジネスをするには、長い年月をかけて培ってきた信頼関係が重要だと考えている。

 当社はEVへの対応にも力を入れている。EVでは、エンジン回りのホースは必要がなくなるが、バッテリーから生じる熱を管理するホース配管の需要が高まるので、そうした製品の開発を進めている。EV化が進むことにより、売上高はさらに高まると考えている。またEV向けでは、NVH(騒音、振動、ハーシュネス)性能の向上を目的として、ホース分野ではエアコンホースの制振性能向上技術、ウェザーストリップ分野では風切り音を低減するシーリング技術の開発、さらにワイヤーハーネスに代わる新たなバスバーの開発に注力している。

CMB・TPVは多くの顧客から品質・納期・価格競争力で高評価

 ■コンパウンド事業
 ゴムコンパウンド(CMB、FMB)や環境配慮素材であるTPVを扱っている。

TPV(樹脂コンパウンド)
CMB(ゴムコンパウンド)製造装置

 CMBについては2,000種類以上の独自のレシピを保有している。生産能力に関しては、韓国で8.9万トン、それにインドとベトナムの工場を合わせ年間約12万トンとなり、韓国メーカーではトップだ。タイヤを除けば、グローバルでも2位か3位だろう。

 TPVは400種類以上の独自レシピを保有しており、日本でも多くのメーカーが採用している、TPVトップメーカーが市場展開している製品については、当社製品で100%代替可能だ。韓国内に年産2.3万トンの生産設備を持ち、韓国ではトップだ。引張、シート成型などの自主テストラボも保有している。

 日本のメーカーでは8社と取り引きがあり、主に海外拠点に供給している。

 9月には釜山市の本社工場にドイツ製のゴムコンパウンド最新設備を導入する。これにより生産能力がアップするとともに、品質もさらに向上する。この設備を、今後海外生産拠点にも導入する計画だ。

 ■産業資材事業・総合貿易事業
 産業資材事業では、防衛産業やコンベヤベルト、産業用ホース、ゴムシート、防舷材、船舶機材、ESS部品などの設計・製造・販売を行っている。特に、防衛ステルスコンパウンドやSMART BELTなど多くの技術特許を保有している。

コンベヤベルト

 総合貿易事業では、EPDMポリマーなどゴム製品製造に必要な原材料の供給販売のほか、各種化学製品分野で貿易事業を展開している。

日本企業とのアライアンスやJVも検討

 ■日本市場での販売戦略
 日本市場では、CMB・TPVコンパウンドと産業資材を中心に市場展開していく。

 CMBに関しては、2,000以上のレシピを持っているので、顧客ニーズに応じた新規レシピの提案が可能だ。

 和承グループが事業展開している、シューズやウェザーストリップなどの自動車部品、産業資材のゴムシート、コンベヤベルト、ゴムホース、シーリング製品などはもちろんのこと、それ以外のあらゆるゴム製品に優れた品質のCMBを供給できる、ゴム配合技術を有している。これは70年以上にわたり蓄積された当社の持つ独自の技術だ。

 コンパウンド専門メーカーとは違い、自社で実際にゴム製品を生産しているため、その部品にとっては、どのようなコンパウンドが適しているのかを熟知しているし、それを製品化する繊細な技術も持っている。これが当社の強みだ。

 生産規模も韓国1位、世界2~3位と巨大なため、原材料の購入コストを抑えることができ、他社よりもリーズナブルプライスでの製品提案が可能だ。多くの顧客から、品質・納期・価格競争力において高い評価をいただいている。

 韓国、中国、インド、インドネシア、米国、メキシコ、ブラジルなどへグローバル供給しており、日本企業に対しても、国内だけでなく、海外拠点への供給で貢献できると思っている。

 TPVに関しては、押出、射出用として多様な分野で活用できるTPVを、自前のレシピで設計、製造販売しており、顧客のニーズに合わせたレシピを新規提案できる。加硫方法も、過酸化物加硫と樹脂加硫の両方可能で、顧客の希望に合わせて対応できる。韓国では高い実績を持っており、現代自動車向けでは8割以上のシェアを占めている。日本では、自動車用シーリング材では、TPVトップメーカーの製品が多く採用されていると思うが、当社では、これと同等の品質で、価格的にもリーズナブルなTPVを供給することができる。

 日本では、特にTPVを拡販したいと思っている。日本企業とのアライアンスやジョイントベンチャーで製造・販売することも検討している。日本企業と提携し、グローバル展開することにもチャレンジしてみたい。

 産業資材に関しては、コンベヤベルトや産業用ホース、ゴムシート、防舷材など、さまざまな製品を扱っているが、日本市場で特に注力展開したいのは、海上風力発電用のシール製品だ。韓国ではすでに高い実績を持っている。周囲を海に囲まれている日本では、今後海上風力発電施設が拡大してくるだろう。当社の製品と技術力で日本の海上風力発電に貢献できると思っている。

 また船舶用のシーリング部品も日本市場で拡販していきたい。船舶を前進させるためのスクリューに装着するスタンチューブシールと、船舶の方向を変えるためのスクリューに装着されるバウスラスターシールがあり、ともにスクリューから入ってくる海水の流入を防止するシール材だ。韓国の船舶会社と開発した製品で、造船業の盛んな日本で拡販していきたい。

 設備投資が活発なデータセンター向けでは、自社開発しているクーリングホースの拡販に取り組んでいきたい。

 産業資材に関しては、日本企業との技術提携による事業拡大や市場開拓を考えている。ともに成長を目指していきたいと志向する企業があれば、積極的に提携を検討していきたい。

ホ・ソンニョン(Sungryong Heo)CEOの略歴

 1958年9月28日生まれ、67歳。

 1985年4月和承R&A入社、2011年3月和承R&Aホース事業本部長・常務、2013年10月和承素材素材事業部本部長・常務、2014年2月和承素材代表取締役、2021年3月和承コーポレーション代表取締役

 お問い合わせはこちらまでe-mail:jeonghun.jeon@hscorp.com