【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、上海主導で値崩れを起こす
連載 2017-09-25
マーケットエッジ株式会社 代表取締役 小菅 努
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、9月6日の1キロ=234.70円をピークに、210円割れを打診する急落地合になった。上海ゴム相場が突然の値崩れを起こす中、一気に価格水準を切り下げている。円安の影響で上海ゴム相場との比較では下げ幅が限定されているが、8月中旬以来の安値圏まで下落している。
上海ゴム相場は1トン=1万6,000元台をコアとした保ち合い相場から、1万5,000元台を割り込む急落地合に転じた。1週間で最大2,000元幅の急落となっており、これが東京ゴム相場も押し下げる原動力になっている。
もっとも、天然ゴム需給動向は殆ど材料視されておらず、専ら投機主導の値動きになっている。一応は上海取引所の認証在庫が急増傾向にある影響なども指摘できるが、中国コモディティ市場では天然ゴムのみならず鉄鉱石、石炭、銅など他の産業用素材市況も軒並み急落しており、需給以外の要因で急落している可能性が高いことが示されている。
一応は中国政府の引き締め強化に対する警戒感の影響なども指摘可能だが、ここ1-2週間で中国の政策環境に何か大きな変化が生じている訳ではなく、投機主導の値動きとの評価が基本になろう。このため突然に急反発する可能性も十分にあるが、1万5,000元の節目割れでも値ごろ買いを入れる動きが限定されたことを考慮すると、底打ち判断には慎重姿勢が求められる。中国素材市況全体の下げ止まりがみられるか否か、引き続きマクロな中国マネーの動向に注目したい。
一方、9月15日には生産国会合が開催されたが、現段階での市況対策導入は見送られた。国際3カ国ゴム評議会(ITRC)の枠組みにベトナムの参加が決まるなど、生産国間のコミュニケーション強化の流れは実現している。また、価格が懸念されるレベルまで下落した際には、輸出規制を中心に市況対策を検討する方針も示されている。
ゴム相場の下落には政策調整で対応する意向を示した格好であり、ポジティブな動きとの評価も可能である。ただ、マーケットでは現時点での市場介入の合意形成が見られなかったこともあり、生産国会合の動向は特に価格に反映されていない。
東南アジアのハリケーン、価格低下による売り渋りなどが集荷量を若干抑制しており、消費地相場との比較では産地相場に一定の底固さも見受けられる。ただ、産地主導で安値是正を進めるような動きまでは確認できず、引き続き中国投機筋に支配された上海ゴム相場がどの価格水準、時間帯に下げ止まることが可能かのみが注目されることになる。
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