【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、産地主導で上値追いの展開
連載 2022-02-28
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
JPX天然ゴム先物相場(中心限月)は、1キロ=260円台前半まで値上がりする展開になった。産地相場の急ピッチな値上がりが続くなか、上値追いの展開になった。ウクライナ情勢の緊迫化で金融市場ではリスクオフ圧力が目立ったが、原油などコモディティ価格は逆に急伸していることもポジティブ材料視されている。
上海ゴム先物相場は、1トン=1万4,000元台前半をコアに上値の重い展開が続いている。中国通貨人民元の上昇、投機的な売り圧力の強さもあり、産地相場に対して逆行安になる展開が続いている。1万4,000元の節目を割り込むと押し目買いが入るも、本格的に安値修正を進めるような動きはみられず、最近の取引レンジ下限付近で低迷している。
産地相場は急ピッチな上昇が続いている。タイ中央ゴム市場の現物相場は、2月24日時点でUSSが前週比5.0%高の1キロ=64.32バーツ、RSSが同4.2%高の67.70バーツ。引き続き低集荷環境が相場を押し上げている。タイやベトナムでは乾燥傾向が続いており、ウインタリング(落葉期)が集荷量を抑制し、産地相場を押し上げるトレンドが維持されている。60バーツの節目を完全に上抜いているが、2021年のRSS高値は70バーツ水準であり、同水準を上抜くような値動きに発展するのかが注目される。
産地相場の急伸を受けて、サヤ環境も大きく変化している。当限と6番限のサヤは、2月上旬は10円を超える順サヤ(期近安・期先高)となっていたが、足元ではほぼフラット化している。このまま逆サヤに移行すると、産地主導の上昇傾向が一段と鮮明化する。
2月24日にロシアは、ウクライナに対する侵攻を開始した。これからウクライナ情勢がどのような展開を見せるのか、それに対して欧米諸国などがどのような制裁を科すのか、世界経済環境に与える影響など、不透明感が急激に高まっている。日経平均株価は今年最安値を更新している。
ただ、原油や金属、穀物などコモディティ相場は全面高の展開になっており、ゴム相場も買われやすい地合になった。投資環境の悪化、経済の先行き不透明感よりも、ロシア産資源供給が大幅に落ち込むリスクが強く警戒されている。ゴム需給に対する直接的な影響は大きくないが、ブレント原油先物相場が1バレル=100ドルの節目を突破するなど、インフレ懸念を著しく高めるような動きもみられ、250円台での保ち合い相場から上放れしている。2月22日高値は265.20円となり、2021年3月23日以来の高値を更新している。出来高は大きく増えていないが、取組高は1万枚の大台を回復しており、売買は活性化している。
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