連載コラム「白耳義通信」56
「ベルギー領土拡大?」
連載 2021-05-20
鍵盤楽器奏者 末次 克史
日本では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第4波が問題になっていますが、ベルギーでは1日の新規感染者数が、1,000人以下に落ち着いてきています。これはワクチンの接種率が日本より高い(日本は僅か数%、ベルギーは約35%)ことに起因していると思われます。
先日協調委員会が開かれ、この夏までの計画が発表されました。既に飲食店のテラスが解禁(但し、屋内での飲食は不可)されており、街には少しだけ賑わいが戻ってきていた最中でのことです。これからワクチンの摂取が進むのと同時に、日も長くなります。このまま市民生活も元に戻ってくれることを願いたいものです。
さて、1年以上にも渡って重くなるようなニュースが続いるので、この辺りで何か面白いニュースはないかと探していたところ、先日「あわや国際問題まで発展?」しそうなニュースが飛び込んできました。なんとベルギーの領土が、いつの間にか広がっていたというのです。狭くなっていたのはフランス。どうしてこんなことになったのでしょうか。
ベルギーとフランスの国境が取り決められたのは 1820年。ナポレオンがワーテルロー Waterloo の戦い(ブリュッセルから南へ 20km)で破れた後、コルトレイク条約で確定しました。全長は 620km に及びます。
今回問題になった場所は、ベルギーのモンティニー・サン・クリストフ村 Montignies-Saint-Christophe (ブリュッセルから南へ 80km)と、フランスのブジニー・スュール・ロック村 Bousignies-sur-Roc の間です。
事の発端は、地元に住む歴史家が、この辺りの森を散策している最中、国境の位置を確定する標石が動いていることに気付いた為です。1820年の地図と比較してみると、2.29m 移動していることが分かりました。
どうやら地元の農家が、トラクターを運転するのに標石が邪魔だからと、フランス側へ動かしたようなのです。ですので、ベルギーの領土がいつの間にか拡大していたという訳です。隣国同士というものは、何かと緊張が走りやすいものですが、フランスのブジニー・スュール・ロック村長は、笑顔で済ませたとのこと。危うく国境戦争になりそうだったところを、大人の対応に救われました。
【プロフィール】
末次 克史(すえつぐ かつふみ)
山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。
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