清水社長「今の状況は変革へのチャンス」
住友理工、社長交代記者会見を開催
工業用品 2020-07-13
住友理工は7月9日、JPタワー名古屋ホール&カンファレンスで社長交代記者会見を開催した。会見で清水和志代表取締役執行役員社長は「新型コロナウイルスで4、5月と自動車生産は大きく減少したが、むしろ見直せるチャンスと前向きに捉えたい。筋肉質な組織体質への変革のチャンスだ」と語った。同社は6月18日から松井徹代表取締役取締役会長、清水和志社長体制でスタートしている。
会見では、社長交代に至った理由について松井会長が「2018年度の赤字から脱却したこと、2019年12月20日の創業90周年を一つの良い区切りとして決断した」と話し、自身の今後については「少し俯瞰的な立場で経営を見ながら、清水社長をサポートしていきたい」と語った。
清水社長は、住友電気工業で自動車事業本部副本部長、常務執行役員などを歴任した後、2018年に住友理工の専務執行役員に就任。清水社長について松井会長は「自動車関係においては非常にネットワークが広く、当社の主たる事業である自動車分野をますます拡大できる人材だ。性格も非常にざっくばらんで前例にとらわれない面がある。中からだけでは視野が狭いことがあるが、外を経験しているので、その経験を踏まえ大きく変わる時代の中で方向性をつけ進めて欲しい。変化の多い時代に最適な人材ではないか」と語った。
会見で清水社長は、「価値を共創する仲間づくり」、「迅速な意思決定、機動的な事業運営」、「厳しいときこそ筋肉質な組織体質への変革のチャンス」などのキーワードを挙げた。
清水社長はまず、自社の社員を「非常にまじめ、愚直で一生懸命な人が多い」と評価した上で、「今の管理職にあたる20~30年前に入社した人は名古屋地域の人が多く、その人たち同士は阿吽の呼吸でお互い通じる。しかし、時代が大きく変わり、海外メーカーの買収や海外展開などで人が多様化する中では、阿吽の呼吸ではなかなか伝わらないこともある。コミュニケーションが少し上手くできていないところもある」と指摘、そこを車の両輪に例え、きちんと同調すれば価値を共創する仲間づくりに繋がるとした。
また、迅速な意思決定、機動的な事業運営に向けて、新体制になり役員数を3分の2に減らし、組織も簡素化したことを明らかにした。役員数を減らしたことで、意思決定のスピード化に繋がるだけでなく、役員それぞれの意見を聞くことができる利点があるという。
筋肉質な組織体質への変革に向けては「世界の自動車生産台数が増えていく中で、買収等により拠点を広げてきたことは非常に正しかったが、一方で息つく暇がなかった」と話し、新型コロナウイルスで生産台数が減少している今をむしろチャンスと捉え、生産拠点などの見直しを図っていく考えを示した。世界で工場の集約に取り組むほか、国内についても「国内の自動車生産は今後、少し減っていくのではないかとみている」として、それに見合った体制に変えていく。
2022年度までの中期経営ビジョン「2022年住友理工グループVision(2022V)」についても見直す。「自動車はいま激変の中にあり、今年の生産は7~8割、来年も以前の水準までは戻らないと考えている」(清水社長)として、2022年度まで拡大していくことを前提に作成した2022Vを見直す。ただ、目標とする数値等については「どれくらいになるか、時間をかけて見直していく」(同)考えだ。
「萬事入精」
会見で清水社長は、住友電気工業時代から胸に刻み会社生活を送ってきた言葉として「萬事入精(ばんじにっせい)」を挙げた。萬事入精は住友家初代・住友政友(1585~1652年)が後生に遺した商いの心得「文殊院旨意書」の冒頭に記されている言葉で、「何事も粗略にせず、すべてのことについて心を込めて丁寧慎重に励むように」ということ。
また、「社内でコミュニケーションを上手くとるには、上からあけっぴろげに話をした方が良い」(清水社長)として、新たに「社長ブログ」、「社長チャンネル」をスタートした。自らブログを書き、社内インタビューにも応えている。
CASEに対する取り組み
会見で松井会長は、社長在任期間を振り返り「私は在任の5年間で、特に着実な成長と体制強化に取り組んできた。社長に就任してすぐだったと思うが、CASEが進むと当社に未来はないんじゃないかという報道がかなりされた。しかし、CASEに対し新たに何ができるのかを社内でしっかりレビューし体制を作り、新たな商品がスタートするきっかけを作ることができた。CASEに向けた備えづくりができ、将来に向けて少し足跡が残せた点は成果だと考えている」と話した。
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