新技術用い開発したタイヤを来春欧州で発売へ
東洋ゴム工業、ゴム材料基盤技術に進化
タイヤ 2016-11-18
東洋ゴム工業が2011年に確立した独自のゴム材料開発基盤技術「Nano Balance Technology(ナノバランステクノロジー)」が進化している。
ナノバランステクノロジーは、ゴム材料を分子レベルで観察、予測、機能創造、精密制御することで、理想的なゴム材料を高精度に開発する技術。ナノ分析、ナノ解析、ナノ素材設計、ナノ加工という4つの体系を横断的に統合している。低燃費性能とウェットグリップ性能といった相反する性能を高次元で両立させた低燃費タイヤブランド「NANOENERGY(ナノエナジー)」シリーズのほか、他の乗用車用タイヤ、トラック用タイヤなどの開発にも採用されている。2011年の確立以降、進化を続けてきたが、11月17日に5年間の蓄積技術としてナノ解析における進化である「ナノ タンデルタ シミュレーション」とナノ分析における進化である「ナノ ダイナミック サーチ」を発表した。
ナノ タンデルタ シミュレーションは、エネルギーロスとタンデルタの関係性を定量評価し、ゴム特性を短期間で予測可能にした技術。実際のゴム配合に近い精緻なシミュレーションモデルを構築し、そこに分子動力学シミュレーションを用いることで、エネルギーロスと粘弾性のマスターカーブを精度よく計算、グラフ化して定量評価した。これにより、求める性能を導き出すための必要な配合予測が飛躍的なスピードでできるようになり、従来十年単位の時間を費やしていた計算が、2、3日という実用レベルで可能となった。
一方のナノ ダイナミック サーチは、フィラー分散の三次元観察と動的環境下でのゴム材料内部の運動状態を観察することで、エネルギーロスを起こす構造の確認を可能にした技術。フィラー構造における分散性など配合状態を三次元で観察できる技術、SPring-8の高輝度X線によってゴム内部の変形挙動を観察する技術、ゴム材料内部のフィラーの変化挙動を観察しそれら情報を取得する業界初の技術により確立した。これにより、ゴムの路面への追従性やフィラーの凝集体の動きから可視化できたエネルギーロスの確認が可能となった。
同社では、これら技術を採用したフラッグシップ新商品「PROXES Sport(プロクセススポーツ)」を来春に欧州で発売する。プロクセススポーツは、従来品である「PROXES T1 Sport」に比べ、低燃費性能、ウェットグリップ性能ともに約10%向上。ウェットグリップ性能は、EUのタイヤラベリングにおける最高評価の「A」。11月26日からドイツ・エッセンで開催されるエッセンモーターショーでの発表を予定している。
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