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新製品や新技術などに取り組みをCO2削減、2050年の目標実現へ

タイヤメーカーのカーボンニュートラル

タイヤ 2021-10-11

 日本のゴム業界でカーボンニュートラルの動きが加速している。2020年10月、第203回臨時国会の所信表明演説で、菅義偉内閣総理大臣(当時)は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言した。

 2015年にはパリ協定が採択され、世界共通の長期目標として、『世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保つとともに、1.5度に抑える努力を追求すること(2度目標)』、『今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成する』ことなどを合意した。目標実現に向けて世界中で取り組みが進められており、120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」を掲げている。

 10月5日には、大気中のCO2(二酸化炭素)濃度が気候に与える影響を初めて数値で明らかにし、温暖化の原因を科学的に示した真鍋淑郎プリンストン大学上席研究員らにノーベル物理学賞が授与されることが発表されるなど、カーボンニュートラルを巡る動きは世界から注目を集めている。今回はタイヤメーカーのカーボンニュートラルに向けた取り組みの一部を紹介する。

「2050年カーボンニュートラル」実現のためにはCO2などの温室効果ガスの削減が急務(写真はイメージ)

ブリヂストン、2030年にCO2排出量50%削減(2011年比)

 ブリヂストンは環境中期目標「マイルストン2030」を策定し、2030年までに同社グループのCO2排出量を2011年比で50%削減することを目指す。

 マイルストン2030では、商品・サービスのライフサイクル、バリューチェーン全体を通じたCO2削減を図る。生産におけるCO2排出量の削減にとどまらず、断トツの商品・断トツのサービスによるソリューションにより顧客価値を提供しながら、原材料調達、流通、ユーザーの使用時、再利用・リサイクルの過程においてCO2削減に貢献する。こうした取り組みにより社会全体のCO2削減に貢献し、ユーザー・パートナーと共に社会価値の創出を目指す。ユーザーのCO2削減やカーボンニュートラル化に寄与することで差別化、競争力強化を図る。

 同社では、「CO2削減貢献の拡大」(MaaSソリューションによる貢献、運送ソリューションによる貢献、航空機ソリューションによる貢献、鉱山ソリューションによる貢献)、「CO2排出量の最小化」(エネルギーの効率最大化、モノづくりイノベーションの推進、再生可能エネルギーの使用拡大)の両輪で活動を進め、2050年のカーボンニュートラルを目指す(同社発行の「サステナビリティリポート2020~2021」から抜粋)。

住友ゴム工業、2050年にサステナブル原材料比率を100%

 住友ゴム工業は2050年カーボンニュートラルを目指す取り組みの一環として、バイオマス原材料とリサイクル原材料を活用することで、2050年にサステナブル原材料比率を100%にする。9月22日、オンラインで開催されたサステナビリティ長期方針説明会で明らかにした。

 同社では従来からタイヤに関して2050年のサステナブル原材料比率100%を公表していたが、その対象をスポーツ用品や産業品にも広げる。その達成に向け、使用する原材料を合成ゴムやカーボンブラックなどの「有機物資源」と、シリカやスチールコード、酸化亜鉛などの「無機物資源」に分け、それぞれで有効な手法を取り入れる。

横浜ゴム、バイオマスからブタジエンを生成

 横浜ゴムはトップレベルの環境貢献企業になることを環境基本方針にしている。地球環境との調和を図り、事業経営を持続していくために「低炭素社会の実現」、「資源循環型社会の実現」、「生物多様性保全」を推進している。

 低炭素社会の実現については、カーボンニュートラルを目指し、再生可能エネルギーの活用拡大や、省エネ活動を引き続き推進しており、中国の生産拠点では、工場屋根に太陽光パネルを設置し自家発電を進めている。

 技術面で注目されるのが、バイオマス(生物資源)からブタジエンを生成する世界初の新技術の開発だ。バイオマスから効率的にブタジエンを生成することで、石油への依存度を低減しCO2削減に繋げていく。

TOYO TIRE、7月に「脱炭素タスクフォース」を設立

 TOYO TIREは気候変動への対応について、7月にサステナビリティ委員会のもとに「脱炭素タスクフォースを設置し、目標・ターゲット、活動計画、KPI(重要業績評価指数)などを協議。CDP(気候変動など環境分野に取り組む国際NGO)の気候変動に関する質問書や気候関連財務情報開示タスクフォースの最終勧告の内容を参考に、企業が取り組むべき気候変動対策の検討を進めている。

 同社グループは気候変動の緩和に貢献するため、組織内外において事業活動に要するエネルギーの効率的利用によるエネルギー消費量の削減を進めている。また、気候変動への適応あるいは緩和に貢献する新製品・新技術の開発にも取り組み、気候変動の主要因とされているGHG(温室効果ガス)については、組織内外での事業活動および製品を通じた効率的なエネルギー利用を通じて削減を進めている。

 「当社が関与している運輸セクターのCO2排出量は、今や世界全体の約2割を占めるといわれ、自動車メーカーを中心に、サプライチェーン全体で脱炭素の動きが加速している。当社としても、各国・地域の脱炭素政策などによる事業への影響を分析し、必要な対策にリソースを適切に配分していく」と、同社発行の「サステナビリティリポート2021」で清水隆史社長は語っている。

 タイヤメーカーに限らず、ゴム関連企業各社は独自の方法でCO2削減活動を進めている。企業方針や事業規模などによって違いはあるが、「2050年カーボンニュートラル」という目標に向け、活動を続けている。

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