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【マーケットアナリティクス】

天然ゴムの動向、2026年のゴム相場を見通す

連載 2026-01-05

マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努

2026年も上値の重さを維持か

 2026年の天然ゴム相場は、需要の伸びが抑制されるため、2025年に続いて上値が重い展開が想定される。

 需要を満たす供給量の確保が容易な状態が想定され、大規模な供給障害の発生といった動きがみられなければ、マクロ需給要因に基づく値上がりリスクは限られる。OSE天然ゴムRSS先物相場は、2024年10月の1キロ=419.70円をピークとした値下がり傾向を踏襲する見通しであり、2025年安値280.00円を下抜くリスクを抱えよう。

 ただし、2025年前半に価格水準を大きく切り下げたことで一段と急落するリスクは限定される。需要と供給の双方の伸びが抑制されれば、2025年と比較して需給バランスの著しい変化は想定されない。下値260円、上値380円のレンジを想定したい。

 価格見通しのリスクは、下向きになる。世界経済の減速が想定以上に速いペースで進み、ゴム需要も横ばいからマイナスに転じるようなことがあると、急落リスクがある。

 一方、生産地の気象環境は不安定な状態が続く見通しであり、大規模な供給障害が発生した場合には、短期的に急伸するリスクは想定しておく必要がある。

 また、為替環境が不安定化しているため、円安が加速した際には、需給動向と関係なく円建てゴム相場は急伸する可能性がある。2025年後半は日本の財政赤字に対する警戒感が急激な円安を促した。日本銀行は段階的に利上げを進める一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げを進める見通しであるが、金利動向と関係なく円安・ドル高傾向が続くのかは、重要な論点になろう。

2025年は天候不順でも軟調

 2025年の天然ゴム相場は年前半に需要不安を織り込む形で急落したが、年後半は方向性を欠く展開になった。年初の374.30円に対して、2月3日に394.90円まで値上がりしたが、これが年間の最高値になった。

 その後は徐々にトランプ米政権の関税策が世界の自動車市場に混乱を引き起こすリスクが警戒される地合になり、6月3日の280.00円まで急落する展開になった。

 トランプ米大統領は就任直後から貿易相手国に対して、高関税を突き付け、関税の回避・引き下げのために貿易不均衡の是正の受け入れを迫る強引な施策を展開した。特に米中間では関税の応酬が繰り広げられ、米国の対中関税は145%、中国の対米関税は135%に達し、両国経済関係の断絶リスクが警戒されたことが、ゴム相場を下押しした。ただし、その後は両国が段階的に関税を引き下げたことで、通商問題による値下がりは、6月上旬で一服した。

 年後半は7月と11月に東南アジアで豪雨による洪水被害が発生し、上昇する場面もみられたが、いずれも一時的な値上がりに留まった。上海ゴム先物相場は1トン=1万5,000元台を中心に方向性を欠いた。ただし、高市政権の誕生後は為替が1ドル=140円台後半から一時157.89円までの円安・ドル高に振れたため、円建てのOSEゴム先物相場は主に為替要因で値上がりした。

 12月18日時点では年初から11.5%安の331.30円となった。年間平均価格は2024年の334.20円に対して2025年は325.87円と2.5%安となった。

需要は緩やかな伸び率か

 国際通貨基金(IMF)によると、2026年の世界経済成長率は3.1%と、2025年の3.2%、2024年の3.3%から緩やかな減速傾向が予想されている。天然ゴム最大消費国の中国は4.2%と、2025年の4.8%、2024年の5.0%から減速傾向を維持する見通し。トランプ米政権の高関税策のショックは緩和されているが、世界の経済成長に対する信頼感は依然として乏しい。

 世界の自動車市場は緩やかな成長に留まる見通し。パンデミック以前の水準に戻していくが、急加速は見込まれない。

 格付会社フィッチ・レーティングスは、低調なマクロ経済情勢と政策支援の縮小、さらに貿易摩擦やサプライチェーン混乱のリスクから、見通しを「悪化」とした。北米市場について成長を促す要因は限定的としている。中国市場では、需要が頭打ちになる一方、インセンティブの縮小、値引き競争の抑制が市場を圧迫するとの見通しが示されている。

 天然ゴムの需要環境は緩やかな成長見通しを基本に、世界経済の減速加速のリスクを警戒する地合になろう。逆に、各国の強力な政策支援で成長が加速する事態になると、ゴム需要も上振れする可能性が高まる。

不確実性の大きい供給動向

 不確実性が大きいのは供給環境だ。平年並みの気象環境が実現した場合には、2025年に続いて緩やかな増産傾向が想定される。

 ただし、近年は世界各地で異常気象の発生が常態化している。特に東南アジアでは豪雨・洪水・地滑りなどが発生し、農産物生産に大きなリスクが生じる可能性があり、供給制約が著しく強まる可能性には注意が必要だ。

 また、農産物価格全体が値下がり傾向にあることで、農家の生産戦略にも注意が必要。天然ゴム価格が大きく下落すると、パーム油やコーヒー、キャッサバ、果物など他の農産物への作付けシフトが発生する可能性がある。その際には生産体制の維持や増産を促す観点から、中長期的な安値限界に到達したとの見方が下値をサポートする可能性がある。東南アジアで生産される他の農産物の価格・需要動向にも注目したい。

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