白耳義通信 第107回
学校でスマホ禁止?
連載 2025-09-18
鍵盤楽器奏者 末次 克史
ベルギーではこの9月から、新学期に合わせて「学校でのスマートフォン使用を制限するルール」が始まりました。授業中にスマホをいじってしまったり、休み時間に画面ばかり見て友達と話さなくなったりする状況を改善しよう、というのが狙いです。具体的には、小学校や幼稚園では授業中も休み時間も含めてスマホやスマートウォッチの使用を禁止。中等教育、つまり中学校や高校では、1、2年生は授業中も休み時間も使用不可、3年生以上は授業中は禁止だが休み時間での使用は学校の判断に任せられます。ただし、病気で必要なアプリを使用する場合や、特別な支援が必要な場合には例外が認められることになっています。
では、なぜここまで厳しいルールを導入したのでしょうか。背景には「集中力を高めたい」という思いがあります。スマホの通知が気になって授業に集中できなかったり、ついSNSをのぞいてしまったりするのは、ベルギーでもよくあること。また、休み時間に一人でスマホを見ていることで、友達との関わりが減ってしまうという問題もあります。さらに、スマホを通じたいじめやトラブルが増えていること、夜遅くまで画面を見て睡眠不足になることなど、健康への悪影響も指摘されています。
もちろん反応はさまざまです。保護者の中には「これで授業に集中できるはず」と歓迎する人が多い一方、「緊急時に子どもと連絡が取れなくなるのは不安」という声もあります。生徒からも「自由が奪われる」と不満を口にする人がいる一方、「逆に気が散らなくなって授業を受けやすくなった」という前向きな意見も出ています。教師にとっても授業が進めやすくなる半面、違反があった場合にどう対応するかという新たな悩みも出てきました。
実はこうした動きはベルギーだけではありません。フランスでは2018年から小中学校でスマホを禁止、フィンランドも今年から授業中の使用を法律で制限しました。スウェーデンでも全国的な禁止を検討中です。ヨーロッパ各国で、スマホと教育をどう両立させるかは共通の大きなテーマになっているのです。
今回のベルギーの決定は「スマホを敵とみなして完全に排除する」というより、「学びに集中できる環境を整えよう」という姿勢の表れといえるでしょう。スマホは生活に欠かせない便利な道具ですが、使い方次第で学びを妨げる存在にもなります。自由と集中、どちらを優先するべきか。その問いは生徒にとっても身近なテーマなのではないでしょうか。
【プロフィール】
末次 克史(すえつぐ かつふみ)
山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。
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