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白耳義通信 第100回

「パンに虫が入る?」

連載 2025-02-17

鍵盤楽器奏者 末次 克史
 まずは残念なニュースから。2月に入って最初の週末、「ベルギーのワロン地方にある大切な遺跡が荒らされた!」と、報道されました。これはカール大帝に関する場所で、ある教会の近くにあるお墓の遺跡です。

 高校の世界史にも登場するカール大帝。西ヨーロッパを支配し、800年に皇帝になりました。今回被害を受けた遺跡では、650年から780年頃の石の棺が見つかり、中には二人の骨が重なって入っていたようです。この発見はニュースにもなったのですが、それが原因で遺跡が荒らされてしまいました。

 盗人は頭蓋骨を持ち去ろうとしたものの、できなかったようです。遺跡は壊され、大切な情報も失われてしまうことに。今後、このようなことが起こらないように監視カメラをつけることが考えられているようですが、話題にしたがために二次被害が起きるとなると、どこまで情報公開するのか考える必要がありそうですね。

 さて、今月はSNS絡みの話題を。2月10日から欧州のパンやパスタに虫(ミールワーム)が入ると噂が広まりました。しかも成分表示は分かりにくくされていて、消費者が気付かないようになっているとか…。

 それって本当なのか?と議論が巻き起こっています。確かに、朝食のパンを食べようとして、知らないうちに虫を口にしているとなると、ゾッとしますが…。ただ、結論から言うと誤解のようです。

 噂の発端は、ベルギーの政治家がSNSに投稿した次の一文が拡散したもので、「2月10日からパンやパスタに最大4%のミールワームが含まれる可能性がある」と発言。さらに悪いことに「成分表示がラテン語や食品添加物コードで隠される」とも。これらの投稿が拡散され、「知らない内に虫入りパンを食べることになる!」と拡まっていったようです。

 そもそもミールワームは小さな昆虫の幼虫でタンパク質が豊富。未来の食材として注目されており、欧州では数年前から食品として認められています。では、「2月10日からパンに入るのは本当なのでは?」と思うかも知れませんが、どうやら「紫外線処理されたミールワーム粉末が使えるようになる」というのが本当のことらしく、栄養価、特にビタミンDが高いのが特徴とのこと。

 なので、すべてのパンやパスタに虫が入るわけではなく、ミールワームを使うかどうかは、食品メーカーが自由に決めることが真相らしいです。とはいえ、欧州では欠かすことのできないパン。これまでは何も気にせず買っていたパンですが、暫くの間、パン屋で「おたくのパンにミールワーム入っているの?」が合言葉になりそうです。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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