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白耳義通信 第96回

「地方選挙を終えて」

連載 2024-10-18

鍵盤楽器奏者 末次 克史

 去る13日(日)にベルギー地方選挙が行われました。今回の選挙では、相変わらずオランダ語圏のフランダース地域では右派が強かったものの、労働党の躍進が目立ったこと、またブリュッセル首都圏、フランス語圏のワロン地域でも、労働党が議席を増やしました。これは不公平な税金の是正を政策に挙げたことが功を奏したといえます。

 それとは対照的に、どの地域でも議席数を減らしたのが、フランダース地域では Groen、ワロン地域では Ecolo といった環境政党です。これは先月も記事にしましたが、2050年問題が大きく関係していると思われます。余りにも早急に温室効果ガス排出量対策をした為、市民の懐も心も追いつけなかったように思えてなりません。今まで大きな問題もなく過ごしていたのが、環境の為にこれまでと比べ、不便な暮らしを迫られるようになったからです。

 勿論、カーボンニュートラルの実現は一刻も早く対処しなければならないことなのですが、理想と現実のギャップが今回の選挙結果に現れたように感じます。前回票を伸ばした環境政党でしたが、揺り戻し現象が起きてしまいました。

 さて、ここで選挙の話題を離れてコロッケの話を一つ。日本でコロッケといえば、ポテトコロッケ、カニクリームコロッケといったところが定番でしょうか。ものまねタレントのコロッケさんを思い浮かべる方もいらっしゃるかも知れませんが、他にもかぼちゃコロッケやメンチカツが頭に浮かんでくる方もいらっしゃるでしょうか。

 ベルギーでコロッケというと、多くの人がエビコロッケ croquette aux crevettes を挙げると想像します。そのエビコロッケ職人ナンバーワンを決める大会が、先日ブリュッセルで開かれました。今年で13回目を迎える Eat Festival の一環で、このコロッケ大賞は今年で5回目となります。今年は15人のコロッケ職人が腕を競った結果、ブリュッセルにあるブイヨン Bouillon というレストランで働くシェフが選ばれました。

 このコロッケはカニクリームコロッケと比べて、エビのすり身や味がしっかりと残っているクリームコロッケなので、ホワイトビールやラガービールより、濃いビールの方が合うように思います。料理では、なかなか濃いビールは料理が負けてしまうので、合わせるのが難しいものですが、ベルギービールを楽しみたい方にもオススメの一品です。

 なんとクルヴェット Krevet(フランス語の「エビ」をオランダ語風綴りにしたもの)というエビコロッケの為に作られたビールもあるくらい、ベルギー人には思い入れの深いコロッケといっても過言ではありません。ベルギーに来られた際は、是非注文してみてください。

 閑話休題。選挙の話に戻りましょう。10月より前に行われたベルギー連邦議会選挙の結果を受け、自由党の首相であったデ・クロー氏 De Croo が辞任する意向を示したのが今年の6月。しかし中小政党が乱立するベルギーでは過半数に届く政党はなく、連立交渉が長期化したまま現在に至っています。民意が政党に反映される多党制が良いのか、それともアメリカのような二大政党制が良いのか正直分かりません。国の規模にもよるでしょう。それでも何となく国が回っているのはベルギーらしいと言えるのかも知れません。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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