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連載コラム「白耳義通信 」73

「ビールと酒の関係」

連載 2022-10-26

 ベルギーの都市に由来を持つナミュール号が、第27回秋華賞に挑みました。2番人気に推され、初の G1 タイトル獲得なるかと注目されたのですが、惜しくも2着。次戦に期待しましょう。

 さて、ベルギーといえばチョコレートと並んで知られているのがビール。700種類以上ともいわれる多彩な味を楽しむことができるのが特徴です。しかし一番飲まれているのは下面発酵をおこなうラガータイプで、ベルギーでは、ピルスナー(ピルス)Pils と呼ばれています。カフェで銘柄を指定せず、「ビールを一杯ください」と注文するとでてくるのが、このピルスです。

 実は、このピルス。1960年を境に味が変わっていったことを最近知りました。そしてその味に影響を与えたのが日本酒というのは、ビール製造業者には公然の秘密らしいのです。1960年頃何が起こったかというと、大量生産をする為に機械化が進み、樽からメンテナンスがより簡単な円錐形のタンクに変わったことが、味の変化をもたらしたそうです。

 つまり、タンクは酵母による香りの生成を妨げるため、この問題に対処するために、より耐性のある酵母菌株探しが始まりました。研究の途中で、バナナ味がビールの生成に重要な要素があることがわかり、そこで白羽の矢がたったのが日本酒の酵母菌株。ただ、そのままではビール醸造に使用することができないため、改良を重ねラガー酵母株に移すことに成功したという話です。

 このお陰で、温度管理、冷却などをより簡単に調整することができるようになり、ビールの大量生産が進み、多くの人が手軽にピルスを飲むことができるようになったわけです。ビールの遺伝子に、酒の遺伝子が組み込まれているとは、アルコールの世界では随分前から国際交流が進んでいたのですね。

 このような話を聞くと、1960年より前の製造方法で作られたピルスを飲んでみたくなりました。より風味が強かったらしいのですが、そうなるとフリッツ(フライドポテト)に合わなくなるかも知れません。味も時代と共に変化するということでしょうか。

この白耳義通信も早7年目。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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