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連載コラム「白耳義通信」㊲

「ベルギーのバス事情」

連載 2019-10-16

鍵盤楽器奏者 末次 克史
 先月はベルギーの公共交通機関、電車、バス、路面電車の中から鉄道事情をお伝えしました。今月はバス編に参ります。

 ヨーロッパの中でバス網が一番発達しているのはスペインではないでしょうか。近年でこそ高速鉄道 AVE が網羅されつつありますが、高低差のある広大な土地に位置する都市を結ぶにはバスに叶うものはありません。大都市には巨大バスターミナルがあり、数分毎に色々な会社のバスが発着しています。また Wi-Fi やビデオの設備に加え、座り心地の良いシートを採用したデラックスバスも多く走っています。

 対するベルギーは国土が狭いこと。そして北は平坦な土地、南は丘陵地帯が多い為、主要都市を鉄道で結び、そこからバスで地の利が悪いところを結べば事足ります。大きな駅にはバスターミナルが隣接していますが、高速バスも備えたターミナルは数える程です。ベルギーでいう高速バスとはベルギーと近隣諸国を結ぶもので、時間さえ気にしなければ格安料金でオランダ、ドイツ、フランス、スペイン、遠くは東欧諸国まで行くことができます。

 さて市内バスに目を移してみましょう。ベルギーの中規模都市以上であれば市内バス網は充実しています。深夜0時過ぎまでバスは走っており、ブリュッセルなどの大都市になると深夜バスも一時間起きに運行しています。普通運賃はブリュッセル市内であれば1時間約250円。バス、路面電車、地下鉄乗り継ぎ自由。他の都市も約200円で乗り換え自由となっています。

 一番の問題はバスが予定通りに来ないことです。日本の鉄道は時間が正確と言われていますが、流石にバスは交通渋滞などの関係もあって、電車ほど時間ピッタリという訳にはいかないでしょうか。ベルギーも数分程度の遅れは許容範囲ですが、しばしば予定されているバスが来ないことがあります。自主運休かどうか分かりませんが、これは本当に困りものです。

 それから週末に有りがちなのが、時刻表の時間より前にバスが行ってしまうこと。人が余り利用しない土日の朝などはお客さんが乗らない為、バス停で止まることも少なく順調に進み過ぎてしまう訳です。かと言って何処かで時間調節をする為に停まったり、ゆっくり走るなどということも有りませんからこのようなことが起きてしまいます。

 あとバスに乗っていて一番ビックリしたのは、運転手から道を教えてくれと言われたことです。その日が初めての勤務、若しくは初めての路線だったのでしょうか。「バス教習中」と書かれたバスも時々目にするのでバス会社も教育はしているのでしょうが、主にバスの操作に主眼が置かれているのでしょう。ルートは自分で覚えるということなのかも知れませんが、こんなことが日本で起きたら大問題になること必至です。

 時々運転手がルートを間違っても乗客が「この道じゃないよ」と教えているベルギー。このくらいのミスは大目にみてしまうベルギー人だからプロフェッショナルといえる運転手もなかなか育たないのかも知れません。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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