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連載コラム「白耳義通信」33

「笑いの違い」

連載 2019-06-19

 最近日本ではお笑い芸人と女優の結婚が話題になった。どのニュースも一言目には「美女と野獣カップルの誕生!」とか「ブサイク芸人が奇跡を起こした!」などの文字が並ぶ。恐らくベルギー(欧米)では考えられないことだ。勿論、当の本人が自分の容姿を笑いに昇華しているので、外野がとやかく言うことでも無いのだけれど、日本とベルギーでは余りにも違うので今月は「笑い」について考えてみたい。

 先ずベルギーでは、どんな場合でも容姿についてあれやこれや言うのは厳禁である。仲の良い日本人同士であれば「ちょっと太った?」とか「最近痩せたんじゃない?」と言うのはよく聞かれることだけれど、それさえも避けた方が好ましい。これには苦い経験があって、仲の良いベルギー人の友達に「最近ちょっと太った?」と言ったところ “Pardon?”(何?)と強い口調で言われて凍りついたことがある。つまりこれ以上口出しをするなと言うことだ。

 これより不味いのが容姿に関することで、日本では自分の体の中で目立つようなところを敢えて笑えに変え場の空気を明るくする時もあるけれど、先ずそのような人はこちらでは見ない。ましてや相手の容姿を論ったり笑ったりするのは以ての外という空気が流れている。「綺麗だね」「痩せたね」と言う表現も場所や状況を弁えなければセクハラに相当するので注意が必要だ。

 日本でいう、芸人が体を張って笑いを取ったり、素人でさえもその容姿を突っ込んで笑いを取ったりするような「お笑い」というのはこちらでは見ない。そもそも自分を卑下したり、人の欠点を笑うようなことはないので、このような「お笑い」は生まれにくいのだろう。ただし政治的なこととなると話しは変わってくる。一気に攻撃度が増し、王様だろうが、首相だろうがコメディアンが笑いの対象にしてしまう。これはフランス革命や風刺画のような土壌があるから成立するのだろう。

 自分が笑いの対象になるのを好まない欧米人。その中でもイギリスだけは少し事情が違うようで Mr.ビーンのローワン・アトキンソン(Rowan Atkinson)をはじめ、自分が笑いを作りだすコメディアンが多いのは日本と同じ島国ということが何か関係しているのだろうか。

【プロフィール】
 末次 克史(すえつぐ かつふみ)

 山口県出身、ベルギー在住。武蔵野音楽大学器楽部ピアノ科卒業後、ベルギーへ渡る。王立モンス音楽院で、チェンバロと室内楽を学ぶ。在学中からベルギーはもとよりヨーロッパ各地、日本に於いてチェンバリスト、通奏低音奏者として活動。現在はピアニストとしても演奏活動の他、後進の指導に当たっている。ベルギー・フランダース政府観光局公認ガイドでもある。

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