【マーケットアナリティクス】
天然ゴムの動向、産地主導で安値修正の動き
連載 2018-12-17
マーケットエッジ株式会社代表取締役 小菅 努
TOCOM天然ゴム先物相場(期先)は、RSSが1キロ=160円台後半、TSRが140円台後半まで値上がりする展開になった。
上海ゴム相場は1トン=1万1,000元台前半で横這いからじり高の展開になった。
12月入り後は米中通商協議の難航が警戒される中、戻り売り優勢の展開になっていた。しかし、その米中通商協議に楽観的な報道が目立ち始める中、ゴム相場は安値から切り返している。
加えて、低迷状態が続いていた産地相場が安値からの切り返しを見せる中、特に当限の上昇幅が大きくなっている。RSSの当限は月初の140円水準から160円台まで20円幅の急伸地合を形成している。
タイ中央ゴム市場の現物相場は、12月13日時点でUSSが前週比2.2%上昇の1キロ=38.88バーツ、RSSが同3.8%上昇の41.62バーツとなっている。11月以降はRSSで40バーツの節目水準で上値の重い展開が続いていたが、ここにきて安値修正の動きが活発化し始めている。
生産期のピークを脱する中、例年12月のゴム相場に対しては安値修正の動きが強まり易いが、今年も年末を前に安値更新サイクルにブレーキが掛かっている。
また、ここにきて生産国の動きが活発化し始めている事にも注意が必要である。インドネシア当局者は16日にタイ、マレーシア、インドネシアの3カ国がゴム相場の低迷について会合を行うと発表している。現時点では減産や輸出規制に関して具体的な動きは報告されていないが、生産国政府がゴム相場低迷に対する政策調整を検討し始めると、産地相場主導の上昇圧力が強まる可能性がある。
タイ国内では、政府によるゴムの内需拡大策の延長を求める声が強くなっている。1月16日に終了予定だが、更に3-6カ月程度の期間延長を行い、国内のラテックス需要を喚起する必要性が訴えられている。
これまで、産地相場は消費地相場の動向にかかわらず一貫して下落していたが、足元では安値修正の動きが活発化し始めている。このまま産地相場が上昇し、更に米中通商協議の進展期待が株高・円安を促すと、東京ゴム相場は大きく上昇する可能性を抱えている。
ただ、米中通商協議は依然として高いレベルの不透明感を抱えており、10月以降は短期間で悲観と楽観とが交錯する不安定な地合が続いている。トランプ米大統領など当局者の発言に強く依存する不確実性の高い相場環境にあるため、改めてリスクオフ化が強まると、ゴム相場も下押しされるリスクを抱えていることには注意が必要。