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【特集】農業に貢献するゴム企業

日加R&E、天然素材で環境にやさしく,低コストな ホタテ貝殻焼成カルシウム「ホタテパウダー」 ―タイの農業展「AGRI TECHNICA ASIA」で注目

ラバーインダストリー 2025-04-09

(2週間限定無料公開)
 日加商工(本社:東京都墨田区,加藤暢利社長)のグループ企業である日加R&E(本社:東京都墨田区,竹内喜紀社長)はホタテ貝殻焼成カルシウム「ホタテパウダー」をこのほどタイAGRI TECHNICA ASIA展示会に出品し,多くの来場者の足を止めた。

 「タイの主要な農産物であるタイ米の育成時とコメを輸出する際のカビ防止効果に強い興味を持たれた。日本に輸出されるタイ米の約30%が,カビ発生でシップバックされている。ホタテパウダーは,天然素材で環境にやさしく,またコスト面でも優位性を出している。国内外で積極的に展開していきたい」(日加R&E前原一正会長)考えだ。

除菌剤としてアルコールや,塩素系にも引けを取らないホタテ

 ホタテの貝柱を取り除いた貝殻は基本的に廃棄される。日加R&Eはリサイクル企業として,ホタテの貝殻の再利用に注目した。ホタテの貝殻は炭酸カルシウム(CaCO3)を主成分としており,それを1,200℃で焼成すると酸化カルシウム(CaO)と二酸化炭素(CO2)に分解される。この酸化カルシウムを水に溶かすと水酸化カルシウムになる。

 「この水酸化カルシウムが消臭・除菌に効果があり,また除菌剤としてはアルコールや塩素系に比べて全く引けを取らない性質を持っている。むしろそれよりも優れる効果を出しているのがホタテのアルカリ水だ」(前原会長)。

 水に溶かしてできる水酸化カルシウム水溶液はpH 12以上の強アルカリの水溶液で除菌・消臭効果があり,大腸菌,O-157,黄色ブドウ球菌などの細菌やノロウイルス等の各種ウイルスの除菌と,さらに優れた抗カビ効果が見込まれている。「北里環境科学センターで効果を調べたところ,ノロウイルス及び新型コロナウイルス類似のネココロナウイルスに対して効果があるとの結果が出た」(同)と言う。

1ℓの水に1gのホタテパウダーを溶かすだけで強アルカリの除菌水ができる


 水1ℓに対してホタテパウダー1gを溶かすだけで強アルカリの除菌水を得ることができる。「ホタテ貝殻由来の水酸化カルシウムパウダーはすでに食品添加物としてコンニャクの凝固剤等に使用されており,当然口に入っても安全だ」(同)。

鳥インフルエンザにも効果

 同社によると,鳥インフルエンザ対策用途として,①経口毒性試験で安全性が承認され,人の口に入っても安全で,鶏のエサにかかっても安全②0.1%の飽和水溶液はpH 12.5前後の強アルカリ性で各種の菌やウイルスの非生存環境を創出する③皮膚刺激性試験でも非刺激性と評価④水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)に比べ,きわめて安全性が高く,鶏,豚等に直接噴霧も可能──という特徴を示す。車両や外来者の消毒用途にも向いている。

ホタテパウダーの農業用途展開

 農業関連では、「土壌用肥料や葉面散布用特殊肥料としての活用に向けて積極的にアピールしていく方針」(同)。ホタテパウダーを水に溶かし,その水溶液を葉の表面に散布することで、カビが原因の葉腐病や斑点病の発生予防に貢献する特殊肥料として認可を受けており、すでに販売実績も持っている。

 「これを将来的には,インドで展開したいと考えている。インドは現在,国内農業政策に注力していく方針で,市場の発展が期待できる。先般,タイで開催された農業関連の展示会に出品したところ非常に反応が良かった。東南アジアの農業において,現在の化学肥料というのは非常に高い。ホタテパウダーは天然素材で環境に優しく,コストメリットも高い」(竹内社長)。

タイAGRI TECHNICA ASIAの同社展示ブースは多くの来場者で賑わった

水質改善効果も期待ーガンジス川支流で試験を開始

 ホタテパウダーは水質汚染の改良にも使える見通しだ。多孔質であるため水を吸うことによって水質が浄化される。「現在,ホタテパウダーメーカーでは青森市新城下堰地区で水質改善の実験をしており,家庭雑排水の水質改善で,接触ろ過材に地場資源のホタテ貝殻を使用し水質改善効果を得た。並行してインドでもガンジス川の支流等で試験を始めている。この場合はホタテの焼成貝殻を土嚢袋に入れて水を通すようにして,川の中に沈めていく。近年は異常気象で洪水などの自然災害も多い。各種災害で汚泥等の問題があり,被災地の衛生対策・感染予防対策として,また消臭剤としてホタテ除菌水を作って散水することで除菌剤,また消臭剤としても効果があると考えている」(前原会長)。

ホタテ貝殻で水質汚染の改良も可能

PICK UP:ゴムの樹の葉枯れ病対策の可能性に期待

 タイは世界一の天然ゴム生産国。日本でも天然ゴム輸入量(2023年)のおよそ3分の1を占めるが,近年はゴムの樹の葉枯れ病が発生し天然ゴムの生産減が課題となっている。今後ゴムの樹の葉枯れ病対策に使えないかと同社は考えている。

 「ゴムの樹の病気の最大の菌はペスタロチオプシス菌と言われる土壌菌が影響している。これをホタテパウダーのカルシウム水溶液で殺せるということが分かった。またカビも影響しているようで,それはホタテパウダーのカルシウム水溶液で殺菌効果が期待できるとみており,展開していきたい。ゴム産業に関わる企業として,タイに子会社もある企業としてタイのゴムの樹の持続性に貢献できると考えている」(前原会長)とタイでの展開に大きな期待感を持っている。

㊧日加R&E代表取締役社長 竹内喜紀氏、㊨取締役会長 前原 一正氏


(本記事は月刊ラバーインダストリー10月号にて掲載)

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