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データ連携によりAIモデルの能力を飛躍させ新価値創出に道筋

日本ゼオン、企業間の実験データ連携のための秘密計算技術の実証を開始

原材料 2024-12-04

 日本ゼオンは、異なる企業間の実験データを連携させることに成功し、新たに構築されたAIモデルの物性予測性能が向上することも実証した。

 今後は、同取り組みをさらに進化させ、秘密計算技術(データを暗号化したまま計算処理を行う技術)の実装を目指す。将来、今回の技術が確立された際には、「異なる企業が互いのデータを秘匿化したまま共有できる」だけでなく、「高い予測精度を保ったAI の実現」が可能となり、研究開発の飛躍的な加速と効率化を通じ、個社の取り組みを超えた新たな価値の創造が期待できる。

異なる2社が互いの実験データを秘匿化したまま持ち寄ることで能力を飛躍させたAIモデルを共有するイメージ図


 今回の検証では、2つの成果を得ることができた。

 ①異なる企業間のデータ連携とAIモデル活用による可視化=今回、日本ゼオンとZeon Chemicals(ZCLP社)間の合成ゴムに関する実験データを繋げることに成功。ZCLP社は、合成ゴムをはじめとするエラストマー製品の製造・開発を手掛ける日本ゼオンのグループ企業だが、データ管理は日本ゼオンから完全に独立しており、今回の実験データ連携は仮想的な企業間データ連携事例と捉えることができる。

 例えば、配合物の種類や記名ルールが異なっている状況でも、独自の変換プログラムを適用し、データ連携を実現させることに成功した。日本ゼオンのデータベースにはないZCLP社独自の配合剤は、含まれる成分や基本的な物性値など、科学的データを調査し紐づけることで連携後のデータベースの質向上を実現し、結果的に7,000水準以上の配合データベースができあがった。

 ②データ連携によるAIモデルの予測性能の向上=上記で連携した両社データを基に訓練されたAIモデルを用いて、ゴム物性値(Hardness)に対する予測値を実測値と比較した結果、各社単体のデータに比べ、連携されたデータの精度の方が向上していることが確認できた。

 今後の展開としては、企業間データの連携において最大の障壁となる秘匿性を担保する秘密計算技術について、SB テクノロジーと連携し、本格検証を進める。具体的には、秘密計算技術のひとつであるTEE(ハードウェア上の隔離された実行領域内で秘密にしたいデータとデータを処理するプログラムを実行させる技術)を介したデータ連携、AI解析システムを実際に構築し、今回の成果を再現することでその実現性を検証する。

 日本ゼオンではゴムのベストオーナーとして、まずはゴム業界における秘匿化されたデータプラットフォームを構築・提供し、多岐にわたるゴム関連企業の研究開発データを集結させることで、これまでにない大きな価値提供ができるとしている。

 また、同取り組みは、ゴム材料以外への水平展開も可能であり、将来的には各材料に拡大し、同取り組みを新たなビジネスとして展開することも視野に入れている。

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