PAGE TOP

ソリューションで新事業創出へ

【新中期経営計画を聞く】日本ゼオン社長田中公章氏-風土を変えることに重点

原材料 2017-05-22

 
 4月28日、2017-2020年度の新中期経営計画「SZ-20 PhaseⅢ」を発表した日本ゼオン。新中計の考え方などを、田中公章社長に聞いた。田中社長は「PhaseⅢでは、風土を変えることを重視している。風土を変えることで、数値は自然とついてくる。ソリューションにも注力していく」と語った。

 ■PhaseⅢを策定するにあたり重視した点
 会社の風土を変えることを一番重視している。6年前の2011年、SZ-20の策定にあたり、当時は不連続な成長を遂げることを目指し、そのために会社の風土を変えようと考えた。風土を変えることができれば、不連続な成長ができ、その結果、売上高も伸びると判断した。考え方自体は、今回のPhaseⅢの策定に際しても変わっていない。全社戦略も重要だが、むしろそのベースにある風土を変えることが一番重要だ。風土を変えるにあたり、一番重要な点は、仕事に対する考え方やフィロソフィー、仕事のやり方、もっと言えば人生そのものへの想いだ。そこが変わらなければ、風土は変わらないだろう。

 ■風土を変えるには
 どういう風土を変えていくのかというのは、きちんと議論をして決めなければならない。すでに議論は進めている。変える部分、変えなくても良い部分を決めていく。今後、それを従業員と経営陣が話していく中で、具体的に挙げていく。部課長以上だけが理解してもダメだ。現場の従業員に至るまで、風土を変えるとはこういうことだということを理解しなければならない。機会があるごとに、経営陣が工場の現場や研究所に行き、あるいは本社で従業員に伝えていく。どういうものを変え、どういうものを変えないかを具体的に提示し、その結果が分かるようにしていく考えだ。

 ■PhaseⅢではソリューションの提供を掲げている
 ほとんど全てのことにおいて、ソリューションになっていくと思う。顧客の所へ行き話をすると非常によく分かるが、顧客は解決したい課題を持っている。また顧客自身も分かっていない課題というものもある。つまり、顧客はAと思っていた課題が、当社と話をすることによってBという課題が出てきた。課題をAと見るか、Bと見るかで解き方は全く異なり、解は全く違う。それこそがソリューションだ。ソリューションの先端には、課題や問題が存在する。そのため、ソリューションを意識することは、課題や問題を意識することになる。ソリューションを意識していると、まだ茫漠とし、課題や問題に至っていないものを引き出せるかもしれない。ソリューションは、当社の事業の全てに関わってくると思う。それはエラストマー事業でも同じだ。昔は、店頭に日本ゼオンのゴムを並べていれば、みんな買って行った。今は違う。今は、こういう現象が起きているからそれを解決する良い材料はないかという感じだ。その解がゴムだけとは限らない。プラスチックかもしれないし、金属かもしれない。その解に至るには、様々なアプローチの仕方があるわけで、その中から新しい事業が出て、育っていくと思う。顧客が考えてもみなかった課題を引き出せる可能性があり、その解を顧客は求めている。そこに入り込んでいき、ソリューションによって導き出すというのは、当社にとって新しい事業を生み出すことに繋がると考えている。

 ■2020年度までの4年間の投資目標
 具体的な目標値は決めていない。ただ、化学工業は装置産業なので、投資回転率を1だと仮定したら、今の売上高3,000億円を5,000億円に上げるには、2,000億円くらいの投資が必要になるだろう。それを4年間で実施するのは、相当チャレンジングだが、装置産業である限り、物を作らないと売り上げは増えない。

 ■エラストマー事業の投資
 例えば溶液重合スチレンブタジエンゴム(SSBR)を生産する住友化学との合弁会社「ZSエラストマー」は、現状17万トン強の生産設備を有している。当社と住友化学とで開発を進め、性能、品質の高いSSBRを生産すれば、今の設備は早々にフル生産フル販売となるだろう。そうすれば、次のステップを考えることになる。まずは性能、品質を高めていくことだ。それはアクリルゴムなど特殊ゴムについても同じことが言える。

 ■ZSエラストマーのような協業は
 今後、協業を探る機会は増えていくと思う。日本は人口が減少してきているため、大きな売り上げは期待できないが、海外を視野に入れるとまだまだ伸びしろのある事業はいくらでもある。ただ、単独で海外に進出するのはリスキーな部分もある。そのため、競合と一緒に行うということは十分にあり得る。特に日本の企業同士であれば言語は同じで、苦労している部分も似ている。団結できると思う。そういうアンテナを巡らせておく必要がある。

 ■技術的優位性に向けて
 技術的優位性を保つことは製造業にとって一番重要だ。そのため、特許にするのが本当に良いのかは議論になっている。特許は、ある意味中身を開示することになる。もちろん、法律で保護されているわけだが、一方ではヒントを与えることにもなる。そのヒントを元に競合が追いかけて来た時、次も先んじることができるという保証はない。新しい技術を生み出した時、どのように活用していくのかを決めていかなければならない。

人気連載

  • マーケット
  • ゴム業界の常識
  • 海から考えるカーボンニュートラル
  • つたえること・つたわるもの
  • ベルギー
  • 気になったので聞いてみた
  • とある市場の天然ゴム先物