合成ゴムは値上げの流れに
ブタジエン価格が急騰
原材料 2017-02-06
合成ゴムの原料であるブタジエン(BD)価格が急騰している。足元のスポット価格は、急騰前に比べ約3倍。急激な価格上昇に対し、合成ゴムでも値上げの動きが出てきた。BDの高騰は、合成ゴムメーカーにとって大きな収益圧迫要因となる。値上げの流れは、しばらく続きそうだ。
アジアスポットのBD価格は、トンあたり1,000ドル近辺でしばらく推移していた。それが昨秋以降に急な上昇カーブを描き、足元では約3,000ドル、3倍に跳ね上がっている。
BD価格急騰の要因について、合成ゴム関係者は「BDの元となる原油、ナフサ価格も確かに上昇しているが、今のBD価格はそれだけでは説明がつかない。独歩高と言っていい状況で、BD独自の理由が存在する」と語る。そして、その要因として、「好調に推移する中国の自動車生産」を挙げる。
2016年の中国の自動車生産台数は、前年比14.5%増の2,811.9万台。過去最高を更新した。増加する生産台数や保有台数に伴い、タイヤ需要の増加が見込まれるため、それに向けたスチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)といったタイヤ向け合成ゴムの需要増、ひいてはその原料となるBDの需要増に繋がっているのだという。それに加えて、「高騰している天然ゴム価格の影響や欧州からアジアへ流入するBDの減少も背景にある」(同)と話す。
BD価格の急騰は、大幅な収益圧迫要因に繋がるため、合成ゴムメーカーにとっては深刻だ。年明け以降、値上げの動きも活発化してきた。
1月24日、JSRが合成ゴム等の値上げを発表した。値上げ理由について同社は「BD価格の急騰、円安・原油高を背景とした国産ナフサ関連原料の価格上昇」を挙げたが、そこにはBD価格急騰のインパクトがうかがえる。BDを最も使用するBRの値上げ幅はキログラムあたり75円以上、一方主原料にBDを使用せず、ナフサ価格に連動しやすいエチレンプロピレンゴム(EPDM)は同25円以上。BDの差だけとは単純に言えないだろうが、両品種の値上げ幅には50円もの開きがついた。
置かれている状況は、他の合成ゴムメーカーも同様だ。今後、値上げ発表は相次ぐものとみられる。BDを使用するクロロプレンゴム(CR)は、すでに海外で値上げを先行しているが、「今のBD価格で、値上げを避けることはできない。国内も例外ではなく、近々発表する」(CRメーカー)と話す。
今後のBD価格は不透明だ。ある合成ゴム関係者は「実需と思惑が交錯しており、それが今後どのように動くかで結果が違ってくる。中国の旧正月明けの動向も注視しなければならない。価格は中国に影響される部分が大きいだろう」と語る。当面は高止まりするという見方もある。関係者の間でも予想が難しいようだ。
ただ、BD価格が足元で高騰していることは事実で、合成ゴム等の値上げの流れは、今のところ変わりそうにない。
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