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CO2を大幅に削減

三井化学、バイオマスナフサ由来プラスチックを製造へ

原材料 2021-05-28

 三井化学は、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、フィンランドの世界有数のバイオマス燃料の製造会社であるNeste、および豊田通商株式会社(愛知県名古屋市、貸谷伊知郎取締役社長)と2021年5月にバイオマスナフサの調達に関する売買契約を締結した。具体的には、豊田通商がNesteからバイオマスナフサを輸入し、三井化学がマスバランス(物質収支)方式による国産バイオマスプラスチックを製造する。

 三井化学は、21年度3Q(10~12月)から4Q(1~3月)にかけて大阪工場のエチレンプラント(クラッカー)に日本で初めてバイオマスナフサを原料として投入する。同時に、マスバランス方式によるバイオマスナフサを原料としたフェノールなどのバイオマス化学品やポリオレフィンをはじめとしたバイオマスプラスチックの製造・マーケティングを開始する。

 Nesteは、Renewable Diesel(=発展型再生可能ディーゼル)では世界トップのシェアを誇るバイオマス燃料のサプライヤー。同社のバイオマスナフサは、植物油廃棄物や残渣油を原料に製造される。今回、バイオマスナフサを使用することで、原料からプラスチック製品が廃棄されるまでのライフサイクルにおけるCO2は、石油由来ナフサ使用時に比べて大幅に削減されることが見込まれる。

 三井化学は、バイオマスナフサをエチレンプラントに投入し、エチレン、プロピレン、C4留分、ベンゼンといったバイオマス基礎原料を生産する。それらバイオマス基礎原料をもとに、フェノールなどの基礎化学品、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン類を製造するため、バイオマス化学品やバイオマスポリマーなどのバイオマス誘導品の品質は既存品と同等となる。

マスバランス方式イメージ図


 また、三井化学及び豊田通商は、国内バイオマスプラスチックの普及に向け、バイオマスの認証制度として欧州で広く採用されているISCC認証(International Sustainability and Carbon Certification)を取得する予定。同認証はEUのバイオマス燃料等の認証として広く認知されており、複雑な生産工程を持つサプライチェーンのバイオマス化を推進させるマスバランス方式に対応している。

 マスバランス方式は、輸送や製造の過程で認証原料と非認証原料が混合されることを認める調達方法。すでに紙、パーム油など多様な業界で適用されている。バイオマス原料の割合を認証済みの手法で最終製品に割り当てることで、顧客は使用原料のバイオマス化を選択することができる。同方式は複雑な原料体系と誘導品、複雑なサプライチェーンを持つ化学業界がカーボンニュートラルを実現するために必須のアプローチであり、マスバランス方式及びISCC認証は今後化学業界でも広がっていくと見られる。

 三井化学は循環経済の実現に向け、化学品・プラスチックのリサイクルとバイオマス化の両輪を進めている。地球温暖化対策に貢献するバイオマス化は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて重要な戦略課題と捉え、素材・プロセスの開発とともに、ステークホルダーとの対話を通じてバイオマスの社会への実装に注力する。3社は今後協力しながら、日本における国産バイオマスプラスチックの新市場創出を推進していく。

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