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<企業とアーティスト>

消しゴムはんこ作家 津久井智子さん

インタビュー 2023-10-24

 工場の一角をアトリエとしてアーティストに提供し、互いに製品開発、作品制作のインスピレーションを受け合おうという、町工場とアーティストによる連携プロジェクトの記事を読んだ。期間限定ではあるが、その間の交流の中でアイデアが生まれれば、コラボ商品の外販も検討するという。

 このニュースを目にしてから、「ゴム業界でもこういう取り組みがあるのだろうか」と思い、探してみた。記者が発見したのは、消しゴムはんこ作家の津久井智子さんと、消しゴムメーカーのヒノデワシとの協働だ。ヒノデワシは1919年創業の企業。創業当初は白髭護謨工業所という名を冠していた、国産消しゴムメーカーの老舗だ。同社は印材なども手掛けてきたが、消しくずが散らない消しゴム「まとまるくん」や、ユーザーの手作りで消しゴムができる「インスタントねんど消しゴム」など、消しゴムのヒット商品を多く生み出して来た。「消しゴムって、厳密にはゴムじゃないですよね?」という声が聞こえてきそうだが、そこは置いておこう。

 今回は、都内のイベント会場で展示会を行っていた、消しゴムはんこ作家の津久井智子さんを訪ね、お話を聞いた。

 

消しゴムはんこは“沼”

 消しゴムはんことは、消しゴムに文字や絵柄を彫り、はんことして使用するもの。最低限必要なのは、消しゴムと三角刀、好きな色のスタンプ台。一度足を踏み入れてしまえば、かなり奥の深い世界だという。

 例えば、使う消しゴムの質や硬さによって彫り方に、インクの種類や押し方によってグラデーションや多彩な表現を生み出す。実験的にあらゆる組み合わせを試したくなるのが消しゴムはんこの醍醐味だ。そんな消しゴムはんこは、ネット用語を借りると“沼”だ。どっぷりハマって抜け出せなくなる魅力がある。「実際に私が定期開催しているワークショップに来る人は、半分以上が消しゴムはんこにハマった常連さんです」(消しゴムはんこ作家津久井智子さん)

 

ヒノデワシとの縁は15歳から

 多くの人を魅了する「消しゴムはんこ」。そのブームの火付け役の一人である津久井さんと、消しゴムはんこの出会いは15歳の時。絵が元々得意だった津久井さんは、筆箱の中にある消しゴムに絵を描いて友達にプレゼントしていた。ちょうどその頃、ヒノデワシから版画用の消しゴム「はんけしくん」が発売され、津久井さんは鬼に金棒状態に。消しゴムはんこの作品力のうわさを聞きつけ、クラスメイトから、担任の先生まで津久井さんに作品を依頼するようになった。
 

ヒノデワシとの協働

 その後、教室で消しゴムはんこを作っていた少女は大人になり、「はんけしくん」のメーカーであるヒノデワシとタッグを組むことになる。

 「大学卒業後しばらくしてから、“はんこ屋”として活動をしていましたが、活動開始後半年も経たない頃にテレビ出演する機会があって。これによってヒノデワシさんとの縁が繋がることになりました」(同)

 たまたまその番組を観ていた同社の営業担当者から連絡があったのだ。

 「製品の宣伝をして欲しい」ということで、ヒノデワシから連絡をもらった津久井さん。元々同社の「はんけしくん」を愛用していたこともあり、快諾した。その後、同社の会議室を借りた消しゴムはんこ教室の開催から、初心者向け消しゴムはんこキットの共同制作まで、まさしく企業とアーティストの協働を実現していった。

 特に初心者向けのキットは好評を得ており、昨年にはリニューアル品も発売した。セット内容のバージョンアップはもちろん、作り方が動画で確認できるようになるなど、初心者に楽しんでもらえる工夫が詰め込まれているという。津久井さんのエッセイブログにも、「私自身の、キットへの注文が多すぎてヒノデワシさんに嫌われてないか心配です」といった思いが綴られるほど、互いに気持ちの入った製品づくりをしている様子が見受けられた。

津久井智子さん監修の初心者向けキット「はじめての消しゴムはんこ。」


 今回の取材で、「初心者の方の導入口としては最高レベルのキットができたと考えています。これでダメだったら、消しゴムはんこは作れないと思っていい」とまで言い切った津久井さんの熱い眼差しがとても印象に残っている。

 取材後記:企業とアーティストの協働の可能性

 就職活動の時点ではなかなか視野に入り辛いゴム業界だったが、ゴム業界専門紙の記者として、今回のテーマは企業とアーティストの協働がゴム業界を広く知ってもらうきっかけになるかもしれないと考えた。また、実際にゴム企業に従事する皆さんとは違った視点で、ゴム製品の新しい魅力を提示してもらえる可能性もある。

 消しゴムはんこ作家の津久井さんは、消しゴムでアート表現を行っているが、そのお話から企業とアーティストによる協働の可能性を感じることができた。

 津久井先生のイベント情報「津久井智子 消しゴムはんこ展」

 ◇場所=ehara gallery omotesando (表参道)
 ◇日程=10月28日(土)~11月5日(日)※火曜休
 ◇時間=11:00~17:00

■津久井智子さんのプロフィール
消しゴムはんこ作家 
津久井智子さん

著書は、『津久井智子の消しゴムはんこ。アイデア帳』(主婦の友社)、『消しゴムはんこ。で年賀状』(大和書房)、『消しゴム花はんこ モチーフ153』(講談社)など15冊。

ホームページ: https://tsukuitomoko.com/
LINE公式アカウント:https://lin.ee/pPlH6Jg
instagram:https://www.instagram.com/tomokotsukui/
Facebookページ: https://www.facebook.com/profile.php?id=100001047521933

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