新事業の創出は形が見えまずまずの成果
【インタビュー】バンドー化学吉井満隆氏、BF-1の最終年度-既存事業の強化は成果の刈り取りにもう1、2年
工業用品 2017-07-18
中長期経営計画「Breakthroughs for the future」の第1ステージ(BF-1)の最終年度を迎えたバンドー化学。既存事業の強化と新事業の創出を目指してきた。「既存事業の強化は進んでいるが、成果の刈り取りにはもう1、2年かかる。新事業の創出については形が見えてきたものが出てきた」と語る吉井満隆社長にBF-1や足元の状況について聞いた。
■足元の状況
4-6月は、ほぼ前年同期並みで推移している状況だ。コンベヤベルトは昨年から選別受注を開始したが、今期もそれを継続している。その成果もあり、需要は低調ながらも採算は悪くない。依然としてマイニング向けの輸出が悪く、その結果として国内の鉄鋼が主戦場となり価格競争が起きている。当社はそこで勝負せず、難燃耐熱コンベヤベルトなど特長ある製品で差別化を図っている。
精密部品は紙需要の減少に伴い、プリンタ等OA機器の生産台数が減少しており、OA機器部品需要も減っている。プリンタの生産台数は減少傾向にあり、今後もトレンドは変わらないだろう。そのため、精密部品のターゲットをスイッチしようと、半導体製造装置やパワーデバイス系へ用途展開を進めている。
主力の自動車用ベルトは、国内は昨年度、熊本地震による自動車生産の一時停止や軽自動車の販売台数減少があったので、それと比べると改善している状況だ。
海外は、韓国自動車メーカーの生産が減少しており、韓国、中国ではその影響を受けている。海外のその他の地域では、タイ、インド、ベトナムが堅調だ。タイでは農業機械用の伝動ベルトが好調で、インド、ベトナムは二輪車向けが順調に推移している。双方ともに、当社が強みとしている領域だ。ベトナムでは現在、二輪車向け伝動ベルトのほか、農業機械、産業機械、OA機器向けの伝動ベルト、クリーニングブレード等を生産する一貫生産の新工場を建設している。来年上期には稼働する予定だ。インドでもグルガオンにあるBando(India)の本社工場を今後の事業拡大を見据え、スペースの広い近隣の新工場に移設。南部のバンガロールにある工場も需要が増加しており、生産設備の増強投資を検討している。また、2年前に販売会社を設立したメキシコは、ここにきて顧客開拓が進み、徐々にではあるが販売実績が上がっている。
■BF-1の最終年度
BF-1では、既存事業の強化と新事業の創出を目指している。
既存事業の強化では、革新製法の確立による収益体質の強化や一般産業用ベルトの中国、アジアでの拡販、コンベヤベルトの収益力強化、高付加価値品による新市場の開拓を図ってきた。加古川工場と足利工場で革新製法を立ち上げたが、まだ業績に寄与できていない。地道な改善活動と原材料安により、17年3月期にはBF-1最終年度の目標である売上原価率70%以下を達成したが、革新製法を確立し、恒常的な収益力をさらに高めたい。
一般産業用ベルトは、狙い通り中国、アジアで拡販できている。同地域は年率2ケタの伸びで、これまでの4年間で大きく伸ばした。コンベヤベルトは、選別受注と特長ある差別化製品等により、利益率は向上している。
高機能エラストマー製品では、精密部品はプリンタ一辺倒から他用途への展開を進め、徐々に成果が出始めている。またフイルムについては隠ぺい性、透過性などの独自性能を活かし、付加価値のある分野への展開が徐々に進みつつある。このように既存事業の強化は概して進んでいるが、刈り取り率がまだ低い。成果を確実にするには、1-2年かかるのではないだろうか。
新事業創出についても、形が見えてきた。この4年間で製品になってきており、一部では限定的ながら量産採用に至った製品もある。最終年度の1年間で、量産を開始させられるものもあると期待している。第2ステージであるBF-2で投資を進め、5年後にはベルトに次ぐ事業の柱に育てていきたい。特に高熱伝導放熱シートや金属ナノ粒子「FlowMetal」など個々の製品にはポテンシャルがある。新事業は、今後の伸びが見込まれるマーケットを狙い、BF-1としては、まずまずの成果を上げることができた。真価が出るのはBF-2になるだろう。
■販売会社統合の効果
販売子会社の西日本バンドーと東日本バンドーを合併し、4月1日からバンドー・I・C・Sとしてスタートした。統合効果の1つ目は、本社が一つになり効率化できるということ、2つ目は戦略の統一性が図れるということだ。東西2社は成り立ちが異なるため、対応がそれぞれ異なっていたが、取扱品やサービス体制、販売政策をある程度統一できた。今後はサービスまでを含めたトータルソリューションを進めていきたいと思う。
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