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熊本工場被災、BCPの重要性を痛感

【新社長インタビュー】共和社長杉原正博氏-売上高よりも利益を確保、顧客ニーズに応える製品開発

工業用品 2017-07-03

 
 4月1日に就任した共和の杉原正博社長。長年社長を務めた加藤直樹相談役からバトンを託された。2023年の創業100周年に向けて、“売上高よりも利益の確保”“顧客のニーズに真摯に応える製品開発”“従業員の人間力向上”などのテーマに取り組んでいく。杉原社長に業績の現況や経営課題・経営方針について聞いた。

 ■17年3月期業績
 16年4月に発生した熊本地震で当社の熊本工場が被災した。当初は「1年以上復旧できない」と言われたほど大きな損傷を受けたが、従業員みんなの懸命な努力により、僅か70日で復旧した。しかし熊本工場では主力製品である粘着テープ類や医療関連商品を製造していたので、業績に大きな影響が出た。5月の業績はこれまで経験したことのないほどの落ち込みだった。欠品を避けるため在庫などで手当てしたが、一部商品についてはカバーし切れなかった。そのため、17年3月期は売上高128億円で、前期比約4億円、率にして約3%の減収となった。前期は自転車タイヤ・チューブやグローブ(手袋)も価格競争激化の影響を受け厳しかった。一方、段ボールの組立機械などを始めとする、包装機械の販売が好調だった。人手不足でこうした自動化機器の販売が伸びている。震災の影響を受けたが、医療関連商品の販売も順調だった。どちらも2ケタ増と売上高が大きく伸びた。

 ■今期業績見通し
 4、5月は震災の影響をまだ引きずり厳しかった。震災で一部商品が欠品し、その間に他社商品に売り場の棚を取られたことが大きかった。できるだけ早く棚を回復したいと思っている。今期売上高は135億円で前期比7億円の増収を計画している。包装機械の新製品上市や医療関連商品に期待している。当社の今期スローガンは“売上至上主義はやめよう”ということ。どうしても売上を求めがちだが、無理に売上を積み上げるよりも適正な利益を得ることに力を入れていきたい。

 ■海外事業の現況
 海外売上高比率は1ケタ台だ。1ドル360円だった固定相場制当時は、自転車タイヤ・チューブの輸出が活発で海外売上高比率は3割を超えていたが、今では輸出が大幅に減少した。海外事業部の仕事も輸出より輸入調達が主になっている。ただ将来的には海外売上高比率を2割台にするのが目標だ。ビニールテープはエジプト、パラグアイ、南アフリカなどで高い実績を持っている。医療関連製品の欧州への輸出も開始した。また輸出先として最大のターゲットと考えているのが中国だ。中国には今年から、国内営業部隊を出張させ市場調査をしている。

 ■海外拠点の状況
 当社はマレーシアと中国・天津に製造拠点がある。マレーシアには2年前まで私が赴任していたが、ここは人手不足や人件費の高騰が深刻だ。そのためネパールやミャンマーから労働者を募っている。中国は環境問題が深刻だ。当社の天津工場も中国当局から操業停止を宣告され肝を冷やしたが、後に間違いであることが分かり無事に済んだ。しかし今後も当局の動きには、充分な注意が必要と考えている。

 ■経営課題
 一つが、先ほども言ったが、売上至上主義はやめて、適正な利益を確保することに努めていく事。2つ目が、お客様のことを第1に考え、お客様の声を良く聞いて、お客様が真に求めている製品を開発し供給する事。3つ目が、従業員の人間力を向上させる事。自分を磨くことで、必ず会社も良くなっていくと考えている。

 ■社長就任の抱負
 熊本地震で工場が被災した経験から、BCPの重要性を痛感した。これは経験した者でないと分からないと思う。BCP対応を徹底したいと思っている。また会社創業100周年に向けて、従業員が「この会社にいて本当に良かった」と思えるような会社にしたいと思っている。

 ◇杉原正博氏の略歴
 1965年生まれ◇天理大学外国語学部卒◇1985年共和入社◇2008年マレーシアのゴムバンド工場「CEC」のMDを務める◇2017年4月社長就任

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