ゴム・樹脂工業用品メーカー、サステナブルな取り組み広がる

　タイヤメーカーが先行している印象のサステナブルを意識した取り組みが、ゴム・樹脂工業用品メーカーでも広がりをみせている。自社で率先して取り組むだけでなく、近年は顧客や社会からの要請も強まってきている。最近のゴム・樹脂工業用品メーカーの主な取り組みを紹介する。
　

東拓工業、再生可能エネルギー由来の電力導入

　東拓工業が進めたのが、再生可能エネルギー由来の電力の導入。同社では全工場（関西りんくう工場、関東おやま工場、九州工場、沖縄工場）で購入する電力を再生可能エネルギーに切り替える計画を進めてきたが、7月の沖縄工場で全ての切り替えが完了した。これにより、全工場の購入電力のGHG（温室効果ガス）の排出量をゼロにした。

　また、製品面でも再生可能エネルギーを意識しており、風力発電・太陽光発電といった再生可能エネルギー施設で電気配管として利用されるFEP（波付硬質合成樹脂管）のTACレックス、難燃TACレックス、角型TACレックスを生産する際の購入電力は全て再生可能エネルギー由来だ。
　

タイガースポリマー、バイオマス由来の製品展開

　タイガースポリマーが展開するのは、バイオマス由来の原材料を用いた製品。BM（バイオマス）シリーズ第1弾として「メディルチューブV580C－BM」と「タイダクトホースGL－BM型」を開発、展開している。

　同シリーズは資源の節約とCO2排出量削減を目指し、原材料の一部にバイオマス由来の資源を使用した。石油資源の使用を抑えるとともに、原材料の元となる植物が育つ際にCO2を吸収することで、製品サイクル全体でCO2を削減する。チューブは理化学機器の薬液搬送配管等に、ホースは空調および一般機械類の送風用に適している。

　「顧客からは非常に好評で、環境対応製品をラインアップすることの重要性を実感している。採用実績を基点に間口を広げていきたい。足下は同シリーズの新製品も開発中で、2023年度中の上市を目指している」（タイガースポリマー）。

　手袋メーカーの三興化学工業が展開するのは、生分解性NBRを用いた使い切り手袋「EcoLogista（エコロジスタ）」。生分解性NBRを用いているため、廃棄時に土に埋めると微生物が分解し、土に還る。CO2排出量は既存品に比べ製造時に4.6%、燃焼廃棄した際も3.7%削減できる。アレルギーの要因のひとつとされる加硫促進剤もフリーのため、環境にも人にもやさしい。包装材料はFSC（森林保護協会・ドイツ）認証を取得したエコ材料を使用。売り上げの一部はWWFに寄付される。「世界的な潮流となっている環境対応製品を扱うことで、供給過剰で価格競争が激しい使い切り手袋市場で差別化を図っていく」（三興化学工業）。

　同じく手袋メーカーの宇都宮製作では、製品廃棄に着目し、「手袋廃棄ゼロ活動」を行っている。同活動では海外工場および同社品質管理室で抜き取り検査後に、残った未使用手袋を製品ごとに規定数量になるよう改めて詰めなおし、社会貢献を行っている団体へ寄付している。また、X（旧ツイッター）を通じて同活動に賛同し、手袋の郵送を希望する個人に向けて、検査によって規定数量以下になり廃棄予定の未使用手袋を、SDGs専用パッケージに詰めなおしてプレゼントしている。

　「抜き取り検査後の製品は、可能な限り従業員が持ち帰るなどの対応をしていたが、数量が多く膨大な量の未使用品が廃棄物として処理されていた。今回の活動で、廃棄物の削減や資源の有効活用に繋がるだけでなく、多くの人に喜んでもらうことができた。これらの反響を励みに、今後も活動を継続していく」（宇都宮製作）考えだ。

　そのほか、SDGsの考えを営業に取り入れている企業もある。十川ゴムでは、3年ほど前から顧客からの開発案件に対し、SDGsの17の開発目標のいずれかを盛り込んで提案する活動を続けている。「環境対応製品を開発・提案しても、コスト増になるという理由で採用に繋がらないケースもある。それならば、通常の開発案件に付加価値として提案する方が、コストの負担も増えず、受け入れてもらいやすいと考えた」（十川ゴム）。

　現在は各営業所の年度目標の中に、“SDGsに関連する新規案件の獲得”を織り込んで活動している。「お客様に提案するためにはSDGsの理解を深める勉強が必要となる。営業力の向上に繋がるとともに、お客様にも喜んでもらえるので双方にメリットがある」（同）。