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【社会に貢献する技術力】

バンドー化学、産業用ベルトメーカーのパイオニアとして活躍

工業用品 2017-03-22

バンドーワイパーエッジEX―熱硬化性ウレタンを使用 耐久性に優れるシール材

バンドーハイパワーエッジEX


 自動車産業をはじめとする各産業で幅広く使用される工作機械には、加工の際に発生する切り粉やクーラントが隙間から漏れないようにするため、摺動部にはさまざまなシールブレードが使用されている。近年、工作機械のハイスピード化・高性能化に加え、使用されるクーラントの多様化により、摺動部に使用されるシール材へのニーズも高まっている。

 クーラントは、従来の鉱油系からシンセティック(化学合成品)系へと広がり多様化が進んでいる。シンセティック系は浸透性が高くて冷却性能に優れるため、エンジンブロックやトランスミッションケースなどのアルミや鋳物の切削加工に使用されている。軽量化をターゲットにアルミ化が進んでいることに加え、燃えないシンセティック系は管理が容易であることも鉱油に取って代わってきた理由の一つだ。これまでシール材の主流だったNBRはシンセティック系のクーラントへの耐性が低い。NBRの分子の中にクーラントが入り込みゴムが膨潤してしまうため、シール機能が失われてしまい品質問題が発生することがあった。

 バンドー化学の「バンドーワイパーエッジEX」は、これらの悩みを解決する製品だ。NBRに代わり特殊な熱硬化性ウレタンを使用しており、シンセティック系クーラントへの耐久性や低摺動抵抗性(めくれにくさ)、耐摩耗性に優れており、従来のシール材よりも設計の自由度も高いという。特に、耐摩耗性ではNBRの10倍以上の性能を持つ。このため、頻繁なシール材交換作業から解放され、加工機械のメンテナンスコスト削減にもつながる。2016年2月の上市から積極的な提案を行っており、一部メーカーでは既存製品のランニングチェンジが完了している。

 画期的な製品だが、その開発までの道のりは長い。発案者である産業資材事業部営業部の阿部勇喜氏によると今回の製品開発は「不幸中の幸いか、めぐり合わせが良かった」と言う。同氏がウレタンを使用したシール材に着想したきっかけは今から10年以上前にさかのぼる。そのアイデアをもとにユーザー向けの提案を行う直前まで話を進めていたが、同氏がクモ膜下出血で倒れ、この話は一旦立ち消えとなったと言う。その後、手術で一命を取り留めたものの、後遺症を患い、復帰後、技術部門を離れ、知的財産部門へ配置換えとなった。「病に倒れたことは残念だったが、転属先で知的財産の重要性を知り、弁理士を目指し猛勉強することで後遺症を克服できたのだと思う」。その後、弁理士試験に合格し「そして、タイミング良く、製品開発ができたのは、社内提案制度であるベンチャー☆カップ制度が創設されたことも大きい。製品化自体はもっと早くできていたかもしれないが、当時は工作機械においてクーラントの多様化、高速化は現在ほど進んでいなかった。それほどニーズが見込めない中での開発となり注目されることもなかったと思う」と語る。

 製品化までの過程では、工作機械の高度化と、それに伴うクーラントの高度化・多様化への対応が重要なポイントになった。特に自動車メーカーは独自のクーラントを使用しており「対応が難しく苦労した」という。「ゴムは配合しているので、分子と分子の間にクーラントが浸透し膨潤しやすく、シール性を損ないやすいが、ウレタンはピュアなので膨潤し難く、クーラントにも強い」そうだ。

 バンドー化学は、国内外の工作機械メーカーへの提案活動を強めており、バンドーワイパーエッジEXが業界から注目を集めている。

 「ベンチャー☆カップ」=バンドー化学では、2013年度からスタートした中長期経営計画において、企業内提案制度として、新事業のネタを集める起業促進制度「ベンチャー☆カップ」を新たに設けた。これは、日常の生活や業務を通して感じたひらめきやアイデアを自ら事業化していく制度で、「バンドーワイパーエッジEX」は、「ベンチャー☆カップ」の第1号挑戦事案だった。

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