軽量化、コスト削減、量産化等に対応
SABIC、 EVバッテリー・パックのコンセプトを開発
工業用品 2021-05-14
化学製品のグローバルカンパニーSABIC(本社・サウジアラビア リヤド)は、熱可塑性プラスチックを活用したEVバッテリー・パックのコンセプトを開発した。
同コンセプトは自動車業界で求められている性能向上やコスト削減、軽量化、量産化といったニーズに対応するため、同社の自動車事業部門がシステム工学アプローチを用いて開発したもの。熱可塑性プラスチックの特性と強みを活かすことで、アルミニウムやその他の金属など従来素材を使用した通常のバッテリー・パック設計と比べ、部品あたり30~50%の軽量化を達成するとともに、エネルギー密度、熱制御、安全性、耐衝撃性などの向上も実現。自動車業界で求められる重要なニーズへの対応が可能になる。
具体的な特徴は以下の通り。
①ガラス繊維を30%充填した難燃性(FR)のSABICポリプロピレン(PP)コンパウンドで成形した薄肉ハウジング内のパウチ・セルに個々のバッテリーを統合する。
②二重壁構造、斬新なリブ型パターン、独創的な機能の統合など形状的な特徴は全てSABICの熱可塑性プラスチックにより実現され、軽量化と構造上の要件に適合する。
③プラスチック素材における熱伝導率の異方性を活用することで熱管理性能を最適化する。
④バッテリー・トレイをSTAMAX FRロング・グラス・ファイバーPP素材を用いたプラスチック金属とのハイブリッド構造に統合することで、熱伝導の最適化、落下テストの要件に適合、サイドフレーム部材に生じる大きな衝撃エネルギーを吸収する。
⑤バッテリー・パックの筐体やカバーをSTAMAX FR樹脂で成形、使用することで、UL94V-0の難燃性等級を達成でき、電磁干渉(EMI)や高周波干渉(RFI)の遮蔽を目的としたカバーへの金属被覆が可能になる。
⑥熱可塑性プラスチックの特徴である設計自由度により、部品点数の削減と組み立ての効率化が実現しコストを低減できる。
SABICでは、早ければ2024年には熱可塑性プラスチックで成形された大型バッテリー筐体が量産化EVに採用されると予測。EVの要件を満たす新素材の開発に加え、大型部品の製造、接合、組み立て、耐衝撃、バッテリーの熱管理、難燃性、電気特性、性能試験などに向けたテクノロジーの実現に取り組んでいる。