タフなロボットを実現するカギに
ブリヂストン、油圧駆動のハイパワー人工筋肉を開発
工業用品 2017-01-27
ブリヂストンは1月26日、油圧駆動によるハイパワー人工筋肉の開発に成功したと発表した。油圧駆動のハイパワー人工筋肉は、極限の災害現場で活躍可能なタフなロボットを実現するためのカギの1つ。内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)タフ・ロボティクス・チャンレンジの一環として、東京工業大学の鈴森康一教授とブリヂストンの櫻井良フェローらの研究チームが開発した。
開発したハイパワー人工筋肉は、「マッキベン型」と呼ばれるもの。ゴムチューブとその外周に編みこんだスリーブと呼ばれる多数の繊維を円筒状に組み上げたもので構成される。ゴムチューブと高張力繊維により滑らかな動きを実現するとともに、油圧での動作を可能とすることで、高い「力/自重比」、高い耐衝撃性/振動性、作業に応じて柔らかい動作も可能という特徴を有する。「力/自重比」に関しては、従来の電気モータや油圧シリンダに比べて約5-10倍の大きな「力/自重比」の発現が可能。
開発にあたっては、①優れた耐油性と変形耐久性を持つゴムの開発②高強度化学繊維の適応③耐高圧端末締め付け技術の開発――がポイントだったが、ブリヂストンでは保有している技術の中から、ゴムの開発には免震、タイヤ、油圧ホースの技術を、繊維に関してはタイヤで使用している化学繊維の技術を、端末締め付け技術には油圧ホースの技術を活用。今回のハイパワー人工筋肉の開発に繋げた。
使用されるゴムチューブは、鋼線や繊維等で補強を行っていないゴム単体のもの。従来油圧ホースに使用されているゴムと補強材等を改良することで、耐油性と変形耐久性の向上を図った。
ImPACTタフ・ロボティクス・チャンレンジでは、東日本大震災や阪神淡路大震災など災害時の極限環境でも人命救助や安全確保に効果を発揮できるタフなロボットの実現を目指し、そのキーコンポーネントの1つである「タフ油圧アクチュエータ(アクチュエータはモータやシリンダに代表される「動きや力」を発生する装置の総称)」の研究開発を進めている。現在、大多数のロボットは電気モータで駆動するが、構造上①「力/自重比」が低い②外部からの衝撃や振動に弱い③大きな力を出すと同時に柔らかく動くことが難しい――という問題があった。
今回開発した人工筋肉はそうした問題を解決している。タフロボットへの使用のほか、大きな力も細かな力も多彩な作業や制御ができることから、将来的には小型軽量で高出力の産業用・家庭用ロボットへの展開も期待されている。
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