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人体や環境に優しい放射線治療が可能に

早川ゴム、可変型放射線遮蔽材を開発

工業用品 2019-10-01

 早川ゴムは9月25日、近畿大学医学部放射線医学教室・門前一准教授を中心とした研究チームと共同で、加温(60度程度のお湯)することで柔らかくなり、常温では型が維持できる可変型放射線遮蔽材「シーラーSTR(Soft Tungsten Rubber)」の開発に成功したと発表した。

可変型放射線遮蔽材「シーラーSTR」


 これは、加熱時に有害なガスが発生する鉛を使用しない、人体・環境に優しい遮蔽材で、再利用が可能、リアルタイムで成型が可能などの特徴を持つ。放射線治療における活用に加え、災害時の緊急放射線防衛材として活用でき、「新しい放射線防護体系への展開も期待できる」(早川ゴム)という。

 従来の遮蔽材は、放射線を用いた医療・工学分野では鉛が主に使用されている。ただ、鉛は加工が困難なことや加熱時に有害なガスが生じること、その廃棄物の環境への影響が懸念されており、米国や欧州では使用を禁止する動きもある。

 鉛フリーの放射線遮蔽材としては、アンチモン、ビスマス、バリウム、タングステンなどが使用されているが、アンチモン、ビスマスは鉛同様に毒性の問題、バリウムは安全使用が可能だが、遮蔽能力が鉛に劣るという問題があった。また、タングステンは放射線遮蔽能力が高く、人体への有害リスクがない優れた金属だが、高価であるという問題があった。

 この課題を解決するため、早川ゴムでは、独自のゴム特殊配合技術により、タングステンの有する放射線遮蔽能力を持ちながら、柔軟性・加工性・可撓性にも富み、加温することで柔らかくなり、常温では型を維持できる、新しい放射線遮蔽材を開発した。

 この開発事業は2017年から取り組みはじめ、近畿大学研究チームから発表された論文が今年9月21日、医学物理分野の専門誌Physica Medica:European Journal of Medical Physicsにオンライン掲載されている。

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